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毛沢東バッジを地肌に刺して流血
これらは、文革期の笑い話や政治的ジョークを集めた『文革笑料集』に収められたエピソードの一部である。
同書は1988年8月、橙実らの編著で、成都の西南財経大学出版社から刊行された。日本では、翌年に『これが「文革」の日常だった』(村山孚訳、余川江編 徳間書店)のタイトルで刊行された。本稿はこの訳書によった。
笑えそうで、笑えないエピソードはこれだけではない。
「頭、右!」「右へならえ」の合図は右翼思想の擁護に聞こえるので、どうしても右を向かなければいけないときは、「左向け左!」を3回繰り返して右を向いた。
また、ある青年は忠誠心を示すために、毛沢東バッジを服ではなく、地肌に直接ピンでとめた。「血はしたたりおちてズボンが真っ赤になった」。
「金日成」「金正日」「金正恩」の文字は分割してはならない
あまりに現実離れしているので、どれも作り話にみえてしまうが、実話に近いものも多いというから驚かされる。
たしかに北朝鮮では、現在でも「金日成」「金正日」「金正恩」の文字は分割してはならないことになっている(しかも同国では、最高指導者の名前が際立つように印刷物では太字で記される)。
また『北朝鮮 絶望収容所』の著者・安明哲は、指の先をナイフで切り、「党と首領様に忠誠を尽くす」と血文字で書いて、政治指導員の信任を得たという(かれはその隙をついて脱北した)。
個人崇拝の行きつくところ、そのあり方はどれも似通ったものになるようだ。