在学中から学費・衣食住が無料のうえ、学生手当が支給されることが広く知られる「防衛大学校」。国防の大任を背負うべきエリート人材を養成する学校で生活する若人たちはどのようなキャンパスライフを送っているのか。
防衛大学校卒の元陸上自衛官であり、現在はエッセイストとして活動するぱやぱやくん氏の著書『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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ようこそ防衛大学校へ、ここが奈落の1丁目
防衛大学校(防大)は、神奈川県横須賀市小原台(*1)にあり、学生たちからは「小原台刑務所」や「ニューホテル小原台」とも呼ばれ親しまれています。防衛省管轄の教育機関であり、陸・海・空、各自衛隊の幹部自衛官となる者を教育訓練している施設です(文部科学省が管轄する機関ではないので、「大学」ではなく「大学校」なのがポイントです)。
*1 防大は横須賀市小原台にあるため、関係者は防大のことを「小原台」と呼称することが多い。防大卒に「小原台はどうだった?」と聞くと、間違いなく「関係者か?」と思われる。なお、住所は走水。
防大は、諸外国で言えば士官学校に該当する学校であり、学生の身分としては「特別職の国家公務員」です。そのため、学費・衣食住が無料のうえ、学生手当が支給され、防大を卒業すると「一般幹部候補生(曹長)」として任官します。
「進学」よりも「出家」に近い学校
防大卒業後に与えられる「曹長」という階級は、一般入隊の隊員の場合だと定年まで勤務して到達する階級です。さらに、現在の制度では防大を卒業すると佐官への昇任はほぼ確定のため、自衛隊内部では「防大はエリートコース」と言われています。
一方で、防大は全寮制で規律は厳しく、ジューシーで甘酸っぱいキャンパスライフを想像すると間違いなく後悔します。どちらかと言うと、田舎のおばあちゃんが作った塩まみれの梅干しを想像したほうがいいでしょう。
そのため、残念ながら防大に進学した新入生は「防大になんて来るんじゃなかった」と少なくとも1日に1回ぐらいは思います。新入生は坊主頭やおかっぱ頭になり、朝から晩までシャウトし、精神と肉体の限界に挑むからです。進学よりも「出家」に近い学校であり、一般社会を娑婆と感じることさえあります。