自衛隊の幹部自衛官となるべき者の教育訓練を行う目的で設立された「防衛大学校」では、一般の大学とは異なるキャンパスライフが繰り広げられている。まるで“サバイバル生活”だったと評されることも珍しくない防衛大学校生活。その知られざる内情とは。

 ここでは、現在はエッセイストとして活動するぱやぱやくん氏が、かつての防衛大学生時代を振り返った著書『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)の一部を抜粋。謎に包まれた防衛大学校での生活に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)

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サバイバル生活を生き残れ

 宣誓書を提出し、防大に入校した新入生には、「生き延びる」という表現がぴったりなサバイバル生活が待っています。起床ラッパから消灯ラッパまで、大声を張り上げ、己の限界に挑むことになります。

©AFLO

 なぜ防大の1学年(*1)の生活が厳しいのかというと、組織において「自分が一番下」という経験が防大の1学年しかないからです。2学年になると1学年が後輩になりますし、任官をすれば自分よりも下の階級の部下がつきます。

 *1 防大では「○年生」「○回生」ではなく、「○学年」と呼称する。ただ人権がない1学年だけは「いちねーん!」とよく上級生から怒られがち。

 つまり、組織において下っ端の人間がどんな思いや苦労をしているのかは、防大1学年のときしか経験することはありません。もし、1学年から上下関係もなく雑用もなければ、若手隊員の気持ちを理解することはできないでしょう。

上級生はエネミー

 防大には教官・助教だけではなく、「上級生が下級生を指導する」という伝統があり、1学年のときは同期と対番学生以外は全員敵です。もちろん、不条理な指導は禁止されていますが、右も左も分からない新入生は指導するポイントしかありません。

「帽子を放置している」「作業服がクシャクシャ」「メモ帳を持っていない」「靴が磨かれていない」など、わざわざ探さなくても山ほど指摘事項が見つかります。