この防大病と闘うために、「のど飴」や「のどぐすり」を持っていくことが推奨されています。
己の身体で罪を償う反省
かつての防大では、「反省」という文化がありました。反省とは「腕立て伏せ」のことを指し、誰かがズル(例:清掃をサボった)をしたり、チョンボミス(例:水筒を忘れた、靴を放置した)をしたときに行われます。現在は教育隊においても行われていないようですが、私が学生の頃は反省が日常であり、生活の一部でした。
反省はあくまでも無理のない回数で行うことが基本であり、実施者の体力を見極めて行うため、腕立て伏せの回数は30~50回程度です(稀に小数点カウントの49.1、49.2……が始まるので油断は禁物ですが)。反省は連帯責任で行われることが多く、人員点呼や訓練の終了時に「残れ!」と言われて始まるのが通例でした。
入校したばかりの新入生は筋力がないため、連帯責任で腕立て伏せが始まると、業火に燃やされているように悶え、苦しみ、うめき声を上げます。
毎日鍛えられた筋肉で何も考えずに腕立て伏せ
しかし、反省中につらそうな顔をしていると上級生から「名俳優」と指摘され、楽そうな顔をしていると「自分さえよければ、苦しい同期はどうでもいいのか!」と怒られるので、つらいときは「涼しげに」、楽なときは「◯◯頑張れ!」とつらそうな同期を応援するのがポイントです。
反省のときは止めどなく汗が流れ出るので、反省が終了すると廊下が滑りやすくなります。これでは危険なため、反省を行った後は雑巾を持ってきて、痕跡を拭き取るのがルールです。
なお、基本的には毎日のように「残れ!」と言われるため、1学年は反省に対する新鮮さが徐々になくなり、2学年に上がる前には「『やれやれ……』と言って僕は腕立て伏せの姿勢をとった」と心の中で村上春樹が呟くようになり、毎日鍛えられた筋肉で何も考えずに50回をこなせるようになります。
このように腕立て伏せは、身体を鍛えられてよいというメリットがある反面、「とりあえず腕立てすればいいか」と脳筋化するデメリットもあります。考えものですね。