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 イメージとしては、『世界名作劇場』に登場する「いじわるなおばさん」のように、「あら! 靴が汚い子だね!」「お前は帽子はいらないのかい?」と上級生が1学年に指摘してきます。防大は、そんな「いじわるなおばさん」がひしめき合い飽和状態になっているため、新入生はひとときも気が抜けません。

相手を全力で倒すつもりの「ハイ!」が最大の武器

 防大では、プライベートの空間がない8人部屋で上級生と一緒に生活をします。2~4学年の目が常にあり「バレないだろう」と手を抜いてもなぜかバレるので、常に全力で生活する必要があります。作業帽を数分間放置していると、上級生が帽子を回収して消えていることさえあるので要注意です。

 いずれにしても、1学年にとって上級生は比喩なしで「エネミー」であり、敵対勢力に近いところがあります。この敵対勢力と戦うために1学年ができることは、気をつけして「ハイ!」と大きく答えるだけです。相手を全力で倒すつもりの「ハイ!」が最大の武器のため、上級生とエンカウントすると基本的には敗北が確定します。そのうえ、防大には上級生がうじゃうじゃしているので、弾幕シューティングゲームのように捌いていく必要があります。

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 上級生に呼び止められたときに「聞こえないふりして走って逃げる」という技もありますが、上級生に回り込まれてしまうとゲームオーバーが確定するので気をつけるほうがいいでしょう(地獄の果てまで追いかけてくる人が稀にいます)。

新入生がかかる「防大病」

 防大では、目上の人に出会ったときに「お疲れ様です!」と発声しながら敬礼を行います。特に1学年のときは「元気よく言おう!」と指導されるため、上級生や教官に会うたびに「お疲れ様です!!」と絶叫します。1学年は防大において最下級戦士であるため、校内のどこを歩いても「お疲れ様です!」とシャウトしながら、壊れたおもちゃのようにひたすら敬礼しなくてはいけません。

 声の大きさについては、教官や上級生が「こいつうるせえな……」と顔をしかめるほどになれば「1学年の誉れ」と言われています。

 ただ、防大の隊舎はホコリがとても多いので「謎の咳」と「鼻水」に悩まされることがよくあります。これは別名「防大病」と言われており、大勢の人がいる環境で大声を出すことで罹患すると言われています。4月になると、学生たちはあちらこちらでゴホゴホと咳をし、鼻水が止まらなくなります。