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5日間で100人ほどが自主退学することも!? 「3歩以上は駆け足」「廊下は戦場」「同期以外は全て敵」…わたしたちの知らない“防衛大学校”生活の“実情”

『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』より #1

2023/07/28

genre : ライフ, 社会

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「防衛大学校へようこそ!」と思ったら、さようなら

 4月1日になると、長く苦しい受験勉強を乗り越え「夢と希望で胸いっぱい」の新入生たちが、約束の地である小原台にやってきます。桜の咲き誇る正門をくぐり、「着校おめでとう!」と言われたのも束の間、髪の長い新入生は問答無用で床屋に直行し、男子はカツオくん、女子はちびまる子ちゃんヘアになります。

 中には「短髪にするのが嫌だから帰る」という新入生もいますが、「ハイ or YES」の世界に無理して留まることはないので、ある意味賢い選択とも言えるでしょう。

 新入生は対番学生(*2)という指南役に生活のルールや裁縫、制服のプレス(アイロンがけ *3)、靴磨き、ベッドメイキングなどの基礎技術を学びます。

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 *2 1学年に生活全般を教えてくれる2学年の指導役。1学年と2学年がそれぞれ1対1のペアになり、悩みなども聞いてくれる。

 *3 自衛隊ではアイロンのことをプレスと呼ぶ。プレスという名称に相応しく、全体重をかけて死ぬ気でシワのばしやズボンの折り目をつける。

 そして新入生は対番学生より、「3歩以上は駆け足」「廊下は戦場」「同期以外は全て敵」という「楽しいキャンパスライフ」というにはあまりにも不穏な言葉を教わります。そうして「ここは奈落の1丁目」であることを実感します。

 新入生の身近な先輩である2学年は、常に何かに追われキョロキョロ・ソワソワしているのも印象的です。防大には「時間は自分で作るもの」という金言があり、理論上は達成不可能なタイムスケジュールの中で学生はなんとか時間を捻出します。そうした生活を生き抜いてきた在校生は、新入生から見ればあまりにもスピードが速く、自分とは別の動物であるゴリラやカメレオンのような不気味ささえ感じます。

 新入生は、「ジャングルに迷い込んだ探検隊」のように困惑するのが毎年の風物詩です。

「お客様期間」の救済処置

「防大はお小遣いがもらえる」という甘い汁だけを求めて防大をチョイスしたことに、早くも後悔で胸がいっぱいになっている新入生には、「救済処置」があります。

 それが「お客様期間」です。お客様期間とは、防大着校日の4月1日から入校式がある4月5日までの体験生活のような期間を指します。

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