2025年2月20日、SNSでドクターイエローこと「923形新幹線電気軌道総合試験車」の写真がいくつも投稿された。JR東海所属の「T4編成」が、ついに廃車のため静岡県の浜松工場まで回送されたようだ。
1月29日に本来の役目の検査走行が終わり、その後は東京・大井車両基地で待機していた。これから東京寄り先頭車の7号車が切り離されて、6月頃までに愛知県の「リニア・鉄道館」に展示されるという。
「リニア・鉄道館」には、すでに先代ドクターイエロー「922形」が展示されている。この車両は実はJR西日本の保有だった。そこで922形をJR西日本に返却し、空いたところに923形7号車を置く。
古巣のJR西日本は、引き取った922形を石川県白山市にある「トレインパーク白山」で展示する予定だ。「トレインパーク白山」は北陸新幹線の白山総合車両所に隣接する施設で、北陸新幹線に関する展示、周辺自治体の観光情報案内、白山総合車両所の作業の見学フロアがある。
JR西日本が922形を引き取ると決めてJR東海が空いた場所に923形の展示を決めたか、逆にJR東海が923形を置くためにJR西日本へ922形の返却を申し出たか、どちらが先かは定かではないけれど、結果として適材適所に気持ちよく収まった。
7両すべて残してほしかった思いはある
しかし鉄道ファンの1人として、個人的には923形の7両編成すべてを浜松工場で保存してほしかった思いがある。
理由の1つは資料的な価値だ。ドクターイエローに搭載されている機器はすべて特注品であり、今後、新幹線の整備に関わる人々にとって、最良の教材になる可能性がある。
そしてもう1つは「商品価値」だ。ドクターイエローの人気にあやかった商品は、玩具、文具、衣料など幅広く、ライセンス収入も大きかったはず。廃車解体されても先頭車は保存されるので人気はある程度は続くだろうが、現役で走らず7両編成の美しさもなくなってしまうと、いつかは人々の記憶から消えてしまうかもしれない。
923形は鉄道ファン以外の知名度も高く、一般の人々に高速鉄道を維持する役目を認知させた功労者でもある。