923形の7号車を「リニア・鉄道館」に保存することは、2025年1月15日にJR東海が発表する前から報道されていた。

 正式発表前は問い合わせても「まだ何も決まってません」という回答だったが、廃車解体の方針は決まっていたようで、2024年12月のJR東海発表「ドクターイエロー(T4編成)引退に伴うイベント等の実施について」で、飲料メーカーとコラボした「引退するT4編成の車体を原料に使用したワッペン」をプレゼントするという記述があった。

 同キャンペーン告知では原材料が「東海道新幹線再生アルミ」と紹介された。車体でアルミを原料とするならば、廃車解体されると見ていい。

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T4編成(左)とT5編成(右)を1枚の写真に収めた。まるで14両編成に見える

 1号車から6号車までは解体となり、7号車は保存される。しかしここでも疑問が残る。なぜ1号車ではなく7号車を保存するのか。923形は全車両に測定機器を搭載しているけれども、7号車は機材の搭載量が少なく、添乗用の50座席を備えている。2+3座席が10列、つまり、営業車両の普通車とほぼ同じだ。

 一方、1号車は測定機器を搭載し、片側側面にモニターがずらりと並び、それを監視するカウンターがある。こちらのほうが「試験車両」らしい姿だ。ドクターイエローを展示し、その役目を紹介するなら、1号車の方がふさわしい。

保存するのが1号車ではなく7号車である理由は?

 その疑問をJR東海関係者に聞くと、こんな回答だった。

「T4編成の引退後もT5編成がこれまで通り約10日に1回の走行を継続します。1編成で検測体制が維持できるように、T4編成の部品や検測装置を予備品として活用します」

 なるほど、1号車から6号車は「部品取り予備」車両として保管する必要があるというわけだ。解体はそのあとかもしれないし、解体して機器を保管するかもしれない。これでT4編成とT5編成が同時に引退しなかった理由もわかった。

 しばらくはJR西日本の923形T5編成が走る。これが2027年度に引退するとドクターイエローは思い出になってしまう。それ以降は、白地に青のN700Sの一部に測定用機器を搭載することになる。技術の進歩により、測定器はすでに営業車両に搭載できるほど小さくなったのだ。

 しかも新たに測定項目を増やし、毎日の営業運転で測定し、リアルタイムで保線基地へ送信できる。ドクターイエローは月に数回の測定運転で、データの受け渡しはUSBメモリだったというから、検査装置としては古いシステムになっていた。