春・夏・冬のシーズンごとに発売されるJRの特別企画乗車券・青春18きっぷ。「普通列車なら1日どれだけ乗っても2,000円強」という破格の低価格チケットは、まだJRが国鉄だった昭和57(1982)年に初めて発売されてから(当初の名称は「青春18のびのびきっぷ」)、世代を超えて大勢の旅行者に愛用されてきた。
その使用ルールがこの冬から大きく変更され、使い慣れたユーザーたちの間で話題になっている。従来は5日間の使用日をシーズン中に購入者が自由に選択したり、5人で1枚を同時使用したりできたが、今回のリニューアルで「5日分は連続使用のみ可」(他に連続3日間用も新設)、「複数人での同時使用不可」という制限が加わった。
登場から40年以上…各地の「鉄道名所」はいま
40年以上前の発売開始当初は国鉄の在来線網が全国で2万キロを超えていたし、普通列車もたくさん走っていた。
だが、赤字ローカル線の廃止や新幹線の開業による並行在来線の第3セクター化などが進み、かつては国鉄・JR線として乗車できた路線や区間で青春18きっぷが通用しなくなった例が増えている。マイカーの普及や過疎化によって地域輸送を担う普通列車が減便され、「特別な急行」であるはずの特急列車の方が本数が多い区間も珍しくない。
最近では、路線の廃止や列車の減便のほかに、利用客が少ない途中駅を廃止あるいは無期限休止にしたり、積雪期は休業して全列車を通過させてしまうといった手法も採られるようになった。
用もないのに普通列車しか停車しない地方の名もなき小駅を訪ねるのは、青春18きっぷがこれまで宣伝ポスターなどでアピールしてきた旅のスタイルの一つなのだが、皮肉なことに秘境駅と呼ばれる過疎地帯の駅ほど、そうした手法によって列車での訪問ができなくなる可能性がある。
「定番・秘境駅」でまた1つ、“事実上廃止”の予感
この冬も、「列車のご利用が極めて少ない」として、12月1日から全ての列車が通過することになった駅がある。
山形県米沢市大字大沢字大沢に位置する奥羽本線大沢駅。山形新幹線が頻繁に通過する幹線途上にあるが、停車するのは1日6往復の普通列車だけだった。その普通列車も12月1日からは停車せず、駅は無期限の営業休止状態となっている。
この大沢駅がある福島~米沢間は、福島県と山形県の間にそびえる峻険な板谷峠を越える山岳路線のため、もともと沿線住民は少ない。
そのため、過去にも利用客の減少を理由に通年休止措置が採られ、そのまま再開せずに廃止された駅がある。峠の福島県側、現在の庭坂~板谷間にあった赤岩駅で、平成29(2017)年3月から全列車が通過して通年休業状態となり、そのまま令和3(2021)年3月に正式に廃止されている。