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 JR東日本では赤岩以外にも、利用者減少を理由に通年休止となった駅がこれまで複数あり、いずれも復活しないまま廃止されている。今回の大沢駅も、同じ結果になる可能性が高い。

峠~大沢間を走る米沢行き普通電車

板谷峠を越えていった「伝説の4連続スイッチバック」

 大沢駅が12月1日から休止になるとJR東日本から発表されたのが10月31日。それ以降、地元の乗降客すらほとんどいない(だから休止に至ったのだが)大沢駅で乗り降りする旅行者が増えたという。休止になれば駅構内に立ち入れなくなり、明治時代に開設された駅の遺構に接することも難しくなるからだろう。

 東北の山深くに位置する小さな駅の休止がこれほど全国の鉄道ファンから惜しまれるのは、この大沢駅を含む山峡の区間が、かつては4連続でスイッチバック式の駅が並ぶ日本屈指の峻険な山岳路線であり、当時のイメージが今も多くの旅行者の心に残り、スイッチバック時代の遺構も今なお健在であることが、大きく影響していると思われる。

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 スイッチバックとは、鉄道が急勾配を上り下りするための線路の構造の一種で、勾配の途中で本線から分岐した平坦な場所に駅を設けるタイプと、ジグザグの線路の行き止まりスペースに駅を設けて前進・後進を繰り返すタイプとがある。

 板谷峠のスイッチバックは4駅とも前者のタイプで、特急・急行列車は本線上を通過するため、普通列車に乗らなければ4連続のスイッチバックは体験できなかった。

スイッチバック式の線路が描かれたかつての板谷郵便局の風景印(筆者所蔵)。スイッチバックの廃止によってこの図柄も使用停止となった

 4つの駅でその都度、列車が前進や後退を繰り返すから、当然ながら運行効率は良くない。

 そのため、山形新幹線の開業に向けてこの区間の軌間(線路の幅)が変更されるのに先立つ平成2(1990)年、板谷峠の4連続スイッチバックは全て解消された。本線上に普通列車用の短いホームが設置され、1駅ごとに列車が行ったり来たりを繰り返すこの区間独特の駅の発着風景は姿を消した。