これからの日本の未来戦略を凝縮した新著『1%の革命』が話題の安野貴博さんが、妻の黒岩里奈さんと共に青山ブックセンターで行われた刊行記念イベントに登壇。都知事選の裏側からAI時代に必要な力まで、本音で語り合った。

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安野貴博さんと黒岩里奈さん 撮影・鈴木七絵(文藝春秋)

東京都にとどまらず日本全体の戦略へ

黒岩 みなさん、お集まりいただいてありがとうございます。今日はチーム安野の一員として、この本ができ上がるまで安野は何をしていたのか? 選挙戦の裏側もふくめて楽しくお伝えできたらと思っています。

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安野 やっぱりトーク慣れしてますよね。あまり自分の妻が、こういうイベントで仕切っているところは見ないので、新鮮です(笑)。

黒岩 では早速、『1%の革命』誕生の経緯を簡単に振り返ってもらえますか?

安野 まず、昨年(2024年)の都知事選のときにつくったマニフェストは、各分野に詳しいチーム安野の面々と一丸となって作成し、かつ、選挙期間中にたくさんのご意見をいただいて練り上げたものなので、そのまま寝かせておくにはあまりにもったいないという思いがありました。

 未来戦略として、より多くの人が長く参照できる本の形にしたくて、チームのメンバーたちに追加リサーチしてもらいながら書いていたのですが、どんどん内容が広がり、東京都にとどまらず日本全体の戦略へと思考が深まっていき、あっという間にこのボリュームになった次第です。

黒岩 すべてはあの渾身のマニフェストから始まったわけだけど、そもそもどうやって作ったんですか?

まず仮説で最終パッケージを書ききった

安野 もともとスタートアップ業界にいてAIにも詳しかったので、こんな風に社会をアップデートできたら面白いという初期仮説があって、それを2024年5月に立候補を決めてからすぐ、一気に書き出したんです。まずは70ページくらいのスライドの骨子を。

安野貴博さん

 そこから、各論で何が言えるだろうとチーム安野のメンバーたちと調査・議論しながら全体像を作っていったのですが、これはコンサルティング会社でよくやるテクニックです。つまり、プロジェクトが始まった瞬間に最終報告のパッケージを全部妄想で書ききってしまう。それを仮説として持った上で、あとから細部を煮詰めていくアプローチです。

 当初、経済、暮らし、デジタル民主主義の3本柱でしたが、最終的なマニフェストとしては、暮らしをより具体的に「子育て・教育」と「医療・防災」に分割し、デジタル民主主義を、「仕組みの理念」と「実行のための行政改革」の2つに分けて、5本柱にしました。