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「腕がズルッと抜けそうに痛い」「今日も一日痛いのかと思いながら目が覚める」ペンネームも作風も変えて“再出発”した漫画家が、指定難病と分かるまでの5年間

水凪トリさんインタビュー #1

2022/01/28

 宝島社の「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第8位にランクインした、『しあわせは食べて寝て待て』(月刊『フォアミセス』で連載中)。難病にかかり、健康も仕事も、それまで通りにはいかなくなった38歳の独身女性が、薬膳とまわりの人々によって少しずつ元気をためていく物語です。作者の水凪トリさんは、以前は別名義で作品を描いていました。

 なぜ絵柄も作風も変えて 、この作品を描くに至ったのか。また、ご自身も「治らない」と言われる難病と診断された水凪さんが、前を向けるようになるまでの葛藤や経緯を聞きました。(全2回の1回目。後編を読む

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ペンネームも作風も変えて「再出発」したワケ

――宝島社の「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第8位にランクインされ、『しあわせは食べて寝て待て』の注目度が一気に上がりました。ご自身で何か変化など感じますか?

水凪トリ(以下、水凪) ありがとうございます。嬉しい反面、ランキングなんて自分には無縁の世界だと思っていたので、恐縮です。自由に描かせていただけるだけでもありがたいのに、まだ驚いている部分のほうが大きいです。

――水凪さんは、別のペンネームで活躍しておられましたよね。ペンネームも作風も変えて「再出発」された理由をお聞きしてもいいですか?

水凪 本人も忘れているような昔のことを覚えていてくださり嬉しいです。当時、他の女性誌で漫画を描いていたのですが、面白い作品が描けなくて、環境を変えてみようと思い、青年誌に持ち込みをしたんです。女性誌で描いていた作家さんが青年誌に移籍して良い作品を描かれているのを見て、自分も「最後の挑戦」みたいな気持ちもあったりと、理由は色々です。採用してくださる雑誌がなければ、漫画はやめようと思っていました。

体力と相談して、週4日のパート生活をする主人公の麦巻さん (「しあわせは食べて寝て待て」より ©水凪トリ(秋田書店)2021)

――『しあわせは食べて寝て待て』は、持ち込みから連載が決まったそうですが、無名の新人漫画家ではない水凪さんが出版社に作品を「持ち込み」されたのはなぜですか?

水凪 プロでも、仕事の場を広げたければ持ち込みをすることは普通なんです。最初に持ち込んだ青年誌では、作品を新人賞に回されて佳作に入ったのですが、その後のネームへの反応があまり良くなかったので、持ち込みを再開しました。ただ、このころには体も不調だったので、3社めに持ち込みをしたフォアミセス編集部で『しあわせは食べて寝て待て』が掲載されるまで3年くらいかかりました。