車高が低いほどステータス、不便を乗り越えてこそ車好き……そんなクレイジーな世界に生きる者たちがいる。地を這う異形のカスタムカーから、見える景色は一体どんなものなのか?
今回は、初代ステップワゴンのカスタムを楽しむ桑名さんご夫妻をご紹介。
新潟で見つけた理想のカーライフ
桑名さん(夫) これは一応、初期型のステップワゴンなんですよ。だいぶ顔が違っているので、パッと見じゃ何の車かわからないですよね。
昔から旧車によくあるロングノーズが好きなので、ミニバンでもそれに近い形にできないかと試行錯誤して。まずはプラモデルを使っていろいろ模型を作ってみて、「これだ」というものを板金屋さんに持っていったんです。小さい頃から手先は器用なので、そうやって何かを作るのも楽しいんですよね。
そうやってステップワゴンを弄りつづけて、もう20年くらいになりますね。トータルの改造費は1000万円を超えているんじゃないかな。内装やオーディオはほとんど自分で作っていますが、やっぱり外装は業者さんに出していますし、一点もののカスタムも多いですからね。
でもありがたいことに、妻はかなり車の趣味に対して肯定的で、いつもイベントにも付き合ってくれているんです。もちろんお金に関しては、「ちゃんとお仕事頑張ってね」程度のことは言われますけどね。趣味を理解してくれて、本当に恵まれていると思いますよ。
今でこそ車のない生活は考えられなくなっていますが、20代の頃はなかなか車を持てずにいたんですよね。自分はずっと料理人をしていて、今は実はミシュラン三つ星ホテルの料理長なんですが、当時は東京で板前の修行中だったので、やっぱり都会じゃ維持できなくて。
それで、ずっとスノーボードが趣味だったこともあり、27歳のときに新潟に移住したんです。実際に来てみると、お米やお酒もおいしいですし、車も維持しやすくて、自分にはとても合っていたなと思いますね。
今では自分で買った土地で畑をやったり、車のカスタムをしたり。田んぼの真ん中にあるような家なので、20人くらい仲間を呼んでバーベキューをしたり、都会とは全然違う楽しみ方ができています。
もちろん地方でこういう車に乗っていると、いつどこに出かけたかがすぐバレちゃいますから、悪いことはできないですよね。それでも、地元の子どもたちはこの車を見るとすごく喜んでくれて。いつも通りがかりに笑顔で手を振ってくれたり、そういうのも乗っていて嬉しいポイントですね。
やっぱり世間的には改造車のイメージが悪くて、暴走族と一緒くたにされることもありますが、私としては周りに迷惑をかけずに、色んな人が見て楽しめるような車にしていきたいですね。