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「夏休み明けになるとガリガリに痩せた子が登校してくる」自治体間で格差が広がる"給食費"の大問題

source : 提携メディア

genre : ライフ, 政治, 社会, 教育

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学校に負担を「丸投げ」でいいのか

現状は、実施率が9割を超える仕組みでありながら、実質的に自治体裁量でその枠組み・予算を判断し決定するものであることが、こうした給食をめぐるさまざまな問題を生み出していると言える。

そうではなく、行政の基礎的な公共サービスとして給食を位置付けることで、全国あらゆるところで、人的・物的条件整備を望ましい水準まで改善していくことが必要ではないか。

その旗印が、「普遍的現物給付としての学校給食無償」である。学校に負担を丸投げするのではなく、行政が責任をもって〈食の権利〉を満たす給食をすべての子どもたちの手元に届ける仕組みを確立する必要がある。

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他方で、「無償であっても評判の良くないデリバリー給食では困る」「この市ではオーガニック給食を展開しているのに……」「無償になると献立が貧相になるのでは」「ご当地メニューが出なくなるのは寂しい」「安い輸入食材が増えたりしない?」というような声も聞かれる。

先に述べたように、給食費無償はあくまで、子どもの教育を受ける権利や成長発達権を保障するために行われるものであって、無償化とともに子どもの〈食の権利〉保障にそぐわないような給食になることはあってはならない。

食育基本法(2005年)に掲げられた「伝統的な食文化」「環境と調和した生産等への配意」「地域の特性を生かした食文化」「農山漁村の活性化」「食料自給率の向上」(以上、第7条)「食の安全性」(第8条)などの基本方針を実現するために、給食費無償は促進剤になるべきもので、足かせになってはならない。単なる栄養摂取の機会ではなく、まさに権利保障として給食を位置付け、無償化とともに、その質を担保する行政の役割を再確認する必要がある。

自治体格差、無償化は3割だけ

今見てきたように、給食費無償は、単に家計負担を減らすだけではなく、給食に携わるひとびとの労働負担を軽減するとともに、「普遍的現物給付」により子どもたちの〈食の権利〉を確実に満たす、非常に合理的な方策と言える。

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