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「銀行団が求める最低預金維持額を下回る」

 巨額の融資が伴うJIPによるTOB。島田社長は6月29日に都内で開かれた株主総会でも、「安定的な株主基盤のもとで、一貫した事業戦略を実行してさらなるトランスフォーメーション(=変革)を実現することができる」などと説明し、理解を求めた。

「週刊文春」は今回、6月初旬、島田社長以下、執行役が参加する「エグゼクティブミーティング」で配布された極秘扱いの内部文書を入手した。その一つが、TOBの成立を踏まえた〈資金繰り及び最低現預金維持コベナンツの状況(6/6試算ケース)〉。そこでは、以下のように記されている。

〈最低限預金維持コベナンツは、2024年度及び2025年度に抵触、年度末と3Q末に約1,300~1,400億円、170~270億円の現預金が不足〉

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 加えて、エクセル表で示されていたのが、〈2025/3 3Q末 不足額 1415億円〉〈2026/3 3Q末 不足額 277億円〉などとする試算結果だ。〈1415億円〉〈277億円〉の部分は赤字で強調されていた。3Qとは、第3四半期(10月~12月)を指す。これらは一体、何を意味するのか。

エグゼクティブミーティングで配布された極秘文書

「この試算結果が深刻なのは、銀行団が求める最低預金維持額を下回ってしまい、コベナンツに抵触すると予測されている点です。エクセル表によれば、2024年度の第3四半期末では最低預金維持額を1415億円下回り、2025年度の第3四半期末でも277億円下回ると試算されています」(東芝関係者)

 コベナンツに抵触すれば、金融機関は原則として、期限前でも融資の全額返済が要求可能とされている。つまり、2024年度もしくは2025年度中に“デフォルト危機”に陥りかねないのだ。内部文書によれば、〈本コベナンツは毎四半期末、測定・判定される〉という。

「東芝はこれまで資金繰りのために、家電、医療機器、半導体メモリなど多くの事業を売却してきた経緯があります。非上場化後に生じかねない“デフォルト危機”を回避するには、さらなる事業売却は避けられないでしょう。ところが、島田社長は専らアクティビストの影響力を排除すれば、すべてうまくいくという調子。他方でこうした財務的なリスク、さらなる事業売却の可能性などは会社の存亡にも直結する問題ですが、説明責任を果たしていません。『メガバンクが積極的に融資してくれるから問題ない』という姿勢なのです」(同前)

6月29日に行われた株主総会 ©時事通信社

 7月3日、東芝に極秘文書が示す“デフォルト危機”などについて見解を求めたところ、以下のように回答した。

「当社グループの財務状況および取締役会での決議事項につきましては、決算資料を含む適時開示および有価証券報告書にて公表をしております。それ以外の財務情報および社内の定例会議・取締役会の内容は公表しておりません。

 当社は、企業価値向上の観点から、現時点において、非公開化が最良の選択肢と考えております。当社が中長期で一貫した経営方針を実行してトランスフォーメーション(変革)を成功させるためには、安定した経営基盤を構築し、株主からの統一的な支援を得ることが重要であると考え、非公開化は当社の企業価値向上に資するとの結論に至ったものです。当社は今般の公開買付けに対して、取締役会全会一致で、賛同意見および当社の株主の皆様への応募推奨を決議しております。

 当社は、短期・中期・長期の時間軸で事業成長戦略を描き、企業価値の向上に向け取り組んでまいります。なお、事業売却等について現時点で決まっているものはございません」

 JIPによるTOBは7月下旬にも開始する見通しだが、こうした試算結果を踏まえて、島田社長らがどのような経営判断を取るのか、注目される。

「週刊文春 電子版」では、「電子版オリジナル」として、東芝幹部の間で共有されている極秘文書のより詳しい中身、島田社長がグループ従業員に送ったメールの文面、島田社長が主導する組織改革に対する社内の不満の声、島田社長の人物像や高額報酬などについても報じている。

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