永松 といっても共通の話題はないし、牛の話をされても分からないから、エウノトで自分がいかに感動したかを伝えたんです。そうしたら彼も気分が良くなったみたいで、「良かったらうちの村にも遊びに来てください」と誘われました。で、後日村に行ったら、そこで長老から結婚の話が出たんです。しかもすでに第1夫人がいて、私は第2夫人でした。
――恋い焦がれたマサイとはいえ、あまりの急展開ですよね。
永松 大変ありがたいお話でしたが、私は仕事が何よりも生きがいなので、「世界を飛び回って家にあまりいないような人間がマサイに嫁ぐことは可能なのでしょうか?」と長老に聞いたんです。
そうしたら、「仕事があるというのはすごくいいこと。仕事がある時はあなたの生きがいである仕事をすればいいし、逆にそれがない時には、村に帰ってくればいいんです」と返事があって。
――伝統的な生き方を貫く民族ゆえに「マサイの規律に従え!」となりそうな気もしますが、実際にはまったく逆だったんですね。
永松 さらに長老からは、「私はあなたが日本人であることもリスペクトする。その代わり、我々の生き方を尊重する気持ちさえ持ってくれれば、あなたもマサイと呼べるんですよ」と言われたんです。「なんて素敵な考え方!」とぶっ飛びましたね。「それ、まさにこれからの時代に必要じゃない?」と思って。同時に、めっちゃおいしい話だと思って結婚しました(笑)。
同じ夫を持っている妻同士でも性的な話はタブー
――交際0日でジャクソンさんと結婚を決めたわけですけど、第2夫人という部分で複雑な気持ちにはならなかったですか。
永松 マサイでは水汲みから牛糞を使った住居づくり、子育てなど、女性の仕事の負担が重いので、一夫多妻制が理にかなっているんですね。だから私も嫉妬とかはまったくなく、第1夫人とも仲良しですよ。よく一緒にジャクソンの愚痴を言っています(笑)。
――最近の愚痴の内容はどんなものですか。
永松 ジャクソンがメチャメチャ太ったので、「いったいどこで何食ってきてるんだか」とか(笑)。同じ夫の愚痴を複数の女性で話すなんて普通ないから、面白いですよ。
一方で、同じ夫を持っている妻同士でも性的な話はタブーです。というか、男同士でも下ネタはほとんど話さないと思います。
――性的な話はNGという暗黙の了解がある?
永松 基本的にマサイはまったくエロくないというか、性というのは本当に秘められたもの、という感覚なんですね。