巨人の2018年シーズンは対外試合5連敗で始まった。ジャイアンツは伝統的にスロースターターの傾向があるチームだ。近年最強だった2012年ですら開幕8試合で1勝7敗の低空飛行だったことは記憶に新しいし、普通なら調整途上のこの時期の勝敗を気にする必要はあまりない。ただ、今年は少し事情が違う。
スロースタートがOKなのはこれまで巨人が基本的に追われる立場のチームだったからだ。「本当は強い」チームなら春先弱くても問題は少ないが、今年の巨人のような前評判が高いとは言えないチームに負けが込むと他チームには「今年の巨人は大したことない」と思われ、自チーム内にも「今年もダメかも」という雰囲気が充満してしまう可能性がある。ましてや今年は3年契約の3年目である高橋由伸監督にとって、ラストイヤーになる可能性がある1年なのだ。
高橋監督の弱点とは?
高橋監督は2016年の就任以来2位、4位と来ており、今季優勝できなければ原前監督の時代から数えて球団ワーストタイの4年連続V逸となる。もし今季も可能性を見せられないまま優勝を逃せば、任期満了による退任は避けられないだろう。球団史に汚点を残すことになる5年連続V逸のピンチを前に、フロントには最善手を打たなければ(あるいは打っているという風に見せなければ)というプレッシャーがかかるからだ。
高橋由伸は基本的に非の打ち所のない男だ。とんでもなく野球がうまく、男女問わず人を惹き付ける華があり、万人に好かれる優しさがあり、社会人としての常識を持ち、それらを鼻にかける嫌みもない。
では強いてあげるなら弱点は何か。
さんざん言われてきたことではあるが、自らを超越的なところに追い込んでいくようなある種のハングリーさだとか、我を押し通すどん欲さに欠ける、というところだろう。入団の経緯にしても、まだ選手としての力を残していながら「引退せざるを得なかった」監督就任のいきさつにしても、由伸自身の人柄がにじみ出ている。自分の気持ちや希望を押し殺した上で、周囲の人間や所属する組織の事情を慮り、自分が期待されている行動を選ぶ。そしてそれに対する不満を表立ってもらすこともない。
たとえばイチローや本田圭佑のようなタイプの選手が同じ状況になったら巨人を飛び出して現役を続けていたはずだ。その選択自体の是非は個人の価値観による部分であり、周囲がとやかく言うことではない。ではなぜその部分に言及するかと言えば、まさにその「飲み込む」メンタリティーこそが、由伸自身が今一つ野球人として突き抜けられない大きな原因になっているのではないかと思うからだ。