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 判決の日、真優子さんの母・由美子さんは大阪高裁の外周で在阪テレビ局の取材を受けていた。被告が罪を認めたことに関する質問を繰り返す女性ディレクターに対し、由美子さんは困惑の表情を浮かべ、素直な感情をうまく言葉にできないでいた。

 業を煮やしたディレクターは被告に対する暴言を並べ、由美子さんから直情的な、怒りの言葉を引き出そうと躍起になっていた。

真優子さんと宮本被告 友人提供

 しかし被害者遺族の感情は、それほど単純なものではないのだろう。宮本被告に対する憤怒の感情が消えないのは当然としても、2年という時間の中で宮本被告に対する感情も不安定に変化し、思いがけぬ“交流”に発展することもあるのだ。

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 というのも、私は由美子さんが宮本被告に送った手紙や、宮本被告からの返信を目にしていたのだ。由美子さんの承諾を得て、一部を紹介する。

亡くなった真優子さん 遺族提供

「大量の浩志さんとのラブショットの数にも負けていません!」

 由美子さんは控訴審が始まろうかという今年5月、誕生日が迫っていた宮本被告にお祝いの言葉をしたため、こう続けた。

《思い返せば(真優子は)めちゃお父さんとお母さんの事をいつも心配してくれて、25年間の短い人生ではありましたがたくさんの優しさをもらって、あの日常も今は懐かしい思い出です。このメモリーは大量の浩志さんとのラブショットの数にも負けていません! またいつかお会い出来る日でもあればいいかなと勝手に思っていますが…夜分はまだ肌寒さも感じられます。お体にはどうぞお気を付けてお過ごしください》

 憎んでしかるべき相手に対して、「また会いたい」と伝えた由美子さんの真意とは何だろうか。もしかしたら、控訴しておきながら、裁判所に姿を現すつもりのない被告に対して、出廷を請う願いが遠回しに込められているのかもしれない。