浮気調査、ストーカー被害の証拠集め、失踪者捜索……探偵の仕事は多岐に渡るが、時に“人間の本性”を暴きだすような依頼も多い。
ここでは、120を超える支社を持つ総合探偵社ガルエージェンシーに所属する探偵が、調査を進める上で実際に体験した恐怖譚を集めた『探偵怪談』(彩図社)より「笑うストーカー」を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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過去に交際していた男性からのストーカー行為
調査員としての修行を積んでいた約5年前、勤めていた支社に依頼があった。
依頼者は女性で、話によると過去に交際していた年齢40歳くらいの男性(以下、対象者と記す)からストーカー行為を受けているとのことであった。
対象者は依頼者の車のタイヤに穴を開けてパンクさせたり、執拗にメールを送ってくるなどのつきまとい行為を繰り返しているという。警察にも相談したというが、証拠がないとして取り合ってくれない。犯行の証拠を集めるために、探偵社に調査を依頼することを決めたそうだ。
当方は即時解決のために、まず依頼者の居住先であるマンションを確認した。駅に近い好立地の高層マンションで、依頼人の車両は1階にある駐車場に停められていた。現場のチェックを済ませると、対象者による嫌がらせ行為の証拠映像を撮影するため、同日の夕刻から張り込みを開始した。
依頼者のマンションは大通りに面した場所に建っているため、マンション前を頻繁に車や人が通る。対象者が動くとすれば、夜遅くだと予想した。
張り込みを続けていると、不審な車両を発見した。1時間毎にマンション前にやってきては車を停めて、何やら観察しているのである。車内に目を向けると、助手席に座る対象者の姿を確認。運転席では20代と思しき、若い作業服姿の男性がハンドルを握っていた。犯行はこの2名で実行される可能性が高まった。が、対象者は降車することはなく、数分ほどで車両は移動していく。
23時、再び問題の車両が現れた。問題の車両はマンションの出入口付近に停車。対象者と運転手の男性の降車が確認された。対象者らの犯行を撮影するため、同マンション脇のコインパーキングに停めていた自分の車両の下に潜り込み、撮影体勢を整える。