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身に覚えのないことが自分のせいに…取引先担当者が繰り返す謎行為の裏にあった、受け継がれる「ちょろまかし」文化

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 働き方, 社会

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担当者の周囲の人たちも見かねて、「これは持ち帰るだけでもたいへんですよ」と助け船を出してくれるのですが、

「いや、別に電車内に置いていくだけでしょう」となり、取り付く島もありません。

そのため一度、年配の担当者の助手役で、いつもその鮮魚を市場へ買いに行っている若い社員に、「なぜAさん(年配の担当者氏)は私に魚を持たせたいのですか」と尋ねると、その社員は、鮮魚をたっぷり詰め込んだ発砲スチロールの箱を二つ積んだ車のトランクを私に見せて、「Aさんが一つ持って帰るからですよ。両方ともおみやげとして松崎さんに渡したことになっているんですよ」と言うのです。

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そして、「Aさんは魚が大好きですから楽しみにしているんですよ。でも、これ持って帰るの大変でしょう。もし本当にいらなければ、私がもらって帰りたいくらいですよ」と続けました。

私は当時、お酒を飲みませんでしたので、私に用意されたのは鮮魚だったのですが、やはりAさんが担当者だった他の同業者は、私が手渡されていたのと、まったく同じように、毎回日本酒をもらって帰っていたようです。これは後になって知ったことです。

個人的なこととして受け止めない

このAさんから依頼を受けていた仕事は朝が早かったため、私はいつも前乗りで現地入りしていました。

仕事は翌朝からですから、夜遅くに到着すればいいのですが、Aさんからは、できるだけ夕方6時までには到着して食事会に参加してほしいと言われていました。そして、間に合わないと言おうものなら、「いやいや、どうしても何とかなりませんか」と迫られるのです。

なぜ私にそれほど参加を促すかと言うと、Aさんは1回の接待で5万円まで自分の裁量で使える権限を持っていて、私のような業者を接待したとなると、5万円を上限に、料理屋で好き放題に飲み食いができるからです。

いつも豪華な料理と高級な地酒で、べろんべろんになるまで、どんちゃん騒ぎをしていました。

Aさんが経費を精算するときに、会社に領収書を提出して、私を接待したとするのかと思うと、決してよい気分はしませんでしたが、どうすることもできませんでした。