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 4歳秋に成長して戻って来てくれると、京都大賞典では前哨戦らしく「あとひと叩きは欲しいかな」というコンディションでしたがしっかりと勝利し、続くジャパンCでは強い競馬ができました。有馬記念は直線で余力なく差し切られてしまいましたが、この敗北にはキタサンブラックの性格が大きく関わっています。

ジャパンカップを勝利した2016年のキタサンブラック ©文藝春秋

 キタサンブラックはいつも利口で、パドックでもおとなしいんですが、レースが近づくとハッキリと走りたい気持ちになる馬でした。競馬が好きだったんでしょう。他の馬よりもパワフルというのもあり、馬場入場・返し馬・ゲートと、戦闘モードに入ったキタサンブラックを制御するのは一苦労でした。ゲートが開きさえすれば楽なのですが…。

「純粋に走りたいというタイプ」

 やんちゃで変なことをするタイプではなく、純粋に走りたいというタイプ。調教は調教、レースはレースとわかっているようでした。ゲートに入ってからもずっと走りたい気持ちが出ていたので、ゲートが開くその瞬間までなんとか気を逸らすことで、どうにか出遅れないように気を配っていました。

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 そういう性格ですから、前に馬がいないほうがリラックスして走るタイプでもあります。前に馬がいるとどうしても抜きたくなって、余計に戦闘モードに入ってしまいます。

 2000m戦くらいのペースであれば道中も抑えやすいんですが、有馬記念くらいの距離になってくると先手を取った方が消耗しないんです。4歳の有馬記念は逃げるマルターズアポジーが常に視界に入っていたから、最後はバテてしまったのでしょう。前に馬がいると抜きたがるのは、レースが好きなキタサンブラックの持つ特徴の一つでした。

 性格的にはディープインパクトも似たような感じの馬でした。ディープインパクトの場合はスタートが遅かったので後方でなんとか抑える必要がありましたが、キタサンブラックはスタートが速かったので先頭に立っていたんです。もしスタートが遅かったなら、それはそれでディープインパクトのような追い込む競馬もやれていたと思います。

 道中で一生懸命になるようなところをどうにかできれば、絶対に逃げなくてはいけないタイプではありませんし、そもそも僕はキタサンブラックに逃げ馬というイメージを持っていません。あくまで「逃げた方が確実性がある」というだけで、逃げというよりは、ただ一番手を走っているという方が近かったです。逃げる馬がいるならどうぞと思いますし、絶対に行きたいという馬がいない時に自分が先頭を走っていた感じです。5歳の大阪杯は、そのイメージで乗りました。