頭部を切断して持ち去ったXの正体は…
一方、多様な価値観が受け入れられる今の時代、Aさんには“女装家のトモちゃん”という、もう一つの顔があった。知人が語る。
「トモちゃんは1日のディスコイベントにも、綺麗に整えたショートヘア、白いカーディガンに、膝下まである黒いロングスカートというファッションでやってきました。終わった後はコスプレからまた元の服装に着替えて。実年齢よりも若々しく見え、40代だと思っていました」
当日の夜、6時間のイベントを存分に堪能したAさん。彼を惨殺し、あまつさえ頭部を切断して持ち去ったXとは、何者なのか。
「ラブホテル街の路上やホテルの防犯カメラを確認すると、女装した被害者と合流した時は、上下白っぽい女性の恰好で、金髪のウィッグをつけているようにも見える。つば付きの帽子を深く被っており、出る時は黒っぽい服装に着替えていた。GPSの追跡を逃れるためか、持ち去った被害者の携帯電話は、退室した時間帯に電源が落とされていた」(前出・捜査関係者)
女の子が夜遊びに行くような服装で夜の街へ
性別は未特定で、身長は推定160センチ前後。Aさんよりも10センチほど低く、男性なら小柄な部類に入る。抜け出す直前の午前2時前、ホテルのフロントに「1人で先に出ます」と内線を入れた際は、女性の声色に聞こえたという。
謎多きXの正体に繋がる糸口は、Aさんが“真夜中の別の顔”を解放してきたススキノの街にある。
週末の夜になると、着飾ってススキノに繰り出すのがAさんの日常だった。
「特別派手な格好ではなくて、女の子が夜遊びに行くような服装。“甘辛ミックス”といって、ワンピースに革ジャン姿や、ミニスカやショートパンツに安室奈美恵風のニーハイブーツとか。ロングヘアのウィッグを被っていたこともありました。ネイルは自分でも落とせるピンク系のマニキュアでしたね」(顔見知りの女性)
化粧も女性が感心するほど洗練されており、遠目には少し大柄な女性そのものだったという。最もよく姿を見かけられたのが、ダンスクラブだ。Aさんが行きつけにしていたクラブの元従業員が振り返る。
「身分証で男性だとは確認していましたが、毎回女装して来るし、ジェンダーへの配慮もあるので、男性客より格安な女性料金で入店してもらっていました。時間帯によっては無料です。社交的で男女の客に積極的に声をかけていた印象。相手は女の子が多く、酔い潰れた女性を介抱して女子トイレに付き添うことも。そこから先は女性スタッフが引き受けましたが」