「しっかりとファンサービスできるのがプロ」
コロナ禍による規制が緩和された今は、試合前の練習後に待ち受けたファンからのサインや写真撮影の求めに積極的に応え、時には自らファンのスマホを手にして2ショットを撮る。それが終わると件のショップに立ち寄ってタオルにサインを書き「僕らのリアルな感情とかを入れたりしても面白いかなと思って」と、その日の気分によってさまざまな言葉も添える。さらに試合に勝てば、ブルペン付近で「勝利の舞」と呼ばれる派手なパフォーマンスを行い、スタンドを沸かせる。そこには「ファンサービスもプロとしての仕事」との考えがある。
「しっかりとファンサービスできるのがプロだと思うので。どの選手も滞りなくしっかりとできたらもっと強いチームがつくれると思うし、球団としてももっと人気になっていけると思うので、そこはひとつの取り組みかなと思ってやってます。ファンサービスをしっかりやることで、野球もしっかりやらなきゃいけないなっていうことにもなるんで、どんなことがあっても受け入れてもらえるように、どんなことがあっても応援してもらえるようにと思って、日頃からやるようにしています」
セ・リーグ単独トップのセーブ数「野球もしっかりやらなきゃいけないな」
「ファンサービスをしっかりやることで、野球もしっかりやらなきゃいけないなっていうことにもなる」との言葉を裏付けるように、田口はグラウンドでもしっかりと結果を残している。昨年は主に中継ぎで45試合に登板して1勝1敗2セーブ、18ホールド、防御率1.25の好成績でチームのセ・リーグ連覇に貢献。今季は退団したスコット・マクガフ(現ダイヤモンドバックス)に代わるクローザーとして、ここまで36試合に登板して1勝2敗25セーブ、防御率1.51をマークしている(8月1日現在)。
「中継ぎ陣もそうですし、野手が本当に勇気をくれる一打であったり、守備であったり、そういうのを見せてくれてるんで。僕も気持ちが入って、それがいいモチベーションになっていいピッチングができてるのかなと思います」
恒例の「勝利の舞」でスタンドのファンを楽しませた後で、一転して真面目な表情で話したのは、24セーブ目を挙げてセ・リーグ単独トップに躍り出た7月30日のDeNA戦(神宮)でのことだ。
「どんだけ(調子が)微妙だなと思ってても、チームが勝った状態で終われるかっていうのが大事だと思うんで。前半は(自身の)2敗と(負けは付かなかったが)サヨナラ打を関根(大気、DeNA)に打たれてるんでね。そういう意味でもしっかりと、後半は全部締めくくれるように頑張ります」
実は「真面目」の一言に尽きる男
その明るいキャラクターから、ともすればチャラチャラしているようにも見られがちだが、取材を通しての印象は「真面目」の一言に尽きる。ファンサービスもピッチングも、一切手抜きナシ。ヤクルトは現在、首位の阪神から13.5ゲーム差の5位と厳しい状況に置かれているが、日頃から「可能性はゼロじゃないんで、そこで諦めたらもう終わり」と口にする田口は、ファンのため、チームのため、仲間のために、残りのシーズンも最後まで全力で走り抜ける。
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