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 既に勇斗くんの死から6年以上がたちましたが、学校側は未だにいじめ自殺を認めていません。遺族との対立状態は続き、2022年11月には勇斗くんの両親が、学校側に損害賠償を求める訴訟を長崎地裁へ提起しました。現在も係争中です。

 両親の願いは「息子のような犠牲者をもう出したくない」という一点だけです。訴訟を起こすまで、学校側に謝罪や賠償を要求したことは一度もありませんでした。それなのに、学校側は不誠実な態度を繰り返します。自殺の発覚直後には、当時の教頭(現校長)が遺族へ「突然死」や「転校」と扱わないかと偽装を持ちかけました。

長崎県・私立海星学園 ©杉山拓也/文藝春秋

 学校側は加害者への指導や、クラスでの命についての話し合いすらも拒否しました。追い詰められた遺族は、長崎県に助けを求めます。ところが、私学を監督する部署の担当者は「海星高は真摯に対応している」と返答します。それだけではなく、「突然死まではギリ許せる」と学校による自殺の隠蔽提案を追認しました。

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長崎県内のメディアの反応

 私は長崎支局で働いていた2020年11月、こうした経緯を取材で明らかにし、スクープとして報道しました。記事は大きな反響があり、Yahoo!ニュースのトップになったほか、共同通信の配信を受ける全国各地の地方紙15紙以上に掲載されました。

 ところが、長崎県内の新聞各社はどこも取り上げませんでした。長崎県が釈明の記者会見を開き、事実関係を認めて遺族へ謝罪すると、ようやく各社は記事を出しました。

 ほとんどが県に批判的な内容でしたが、地元紙である長崎新聞だけは、県側の「積極的な追認ではない」という弁明だけをベタ記事でひっそりと紹介しました。それはまるで県を一方的に擁護するような内容で、遺族の主張は何も書かれていませんでした。

亡くなった勇斗くんの幼い頃(写真:両親提供)

 長崎新聞のおかしな言動はこれだけではありません。私は2020年12月、長崎県知事の定例記者会見で、「突然死」の追認について質問しました。すると、会見の後に県の幹部職員が私の所へ来て、「知事にあんなことを聞くのはルール違反だ!」と怒鳴りました。

 これは明らかな取材の妨害です。私は反論し、口論になりました。言い争っていると、長崎新聞の記者が「あんまり行きすぎたことをされると、記者クラブとして対応せざるを得なくなりますよ」と口を挟んできました。不祥事の追及をやめさせようと、私を脅してきたのです。

なぜ長崎新聞の記者は追及をやめさせようとするのか

 長崎新聞は私だけでなく、遺族にも圧力を掛けていました。両親によると、県を擁護した記事の執筆者が電話を掛けてきて、「いじめ防止に関する法律を守るべきは学校であり、県ではない。よって県は悪くない」という趣旨の主張を述べました。そして、勇斗くんの件の担当から降りると宣言し、後任の記者も紹介しなかったそうです。

 長崎新聞は長崎県から毎年、広告の掲載料などで多額の代金を受け取っており、両者は非常に密接な関係にあると言えます。