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次第にアルコールに逃げるようになった

 それからは何か気持ちが動いたときにお酒を飲むようになりました。だんだんと外に出る機会も増えて人と会うようになったので、その度に飲むようになっていきました。ときには深酒してしまうこともありました。

「これをやり遂げれば良い酒が飲めるかな」

 それが何かを頑張ることのモチベーションになっていきました。

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 そしてだんだんとアルコールが日常のものになってくると、次第に後ろ向きな酒も飲むようになっていきました。何か辛いことがあったり、薬物への欲求が襲ってきたときに、それを我慢するためにお酒に逃げてしまうようになりました。

 先生によれば、それこそ気をつけなければならない落とし穴なんです。

 薬物依存症の患者さんには薬物への欲求から逃れるためにアルコールに逃げて、それまで張りつめていた気が緩(ゆる)んでまた薬物に手を出してしまうというケースも多いそうです。もしくはお酒に逃げた挙句、アルコール依存症になってしまったという例が少なくないらしいんです。

 ぼくも甲子園の決勝から帰ってきたあと、燃え尽き症候群のような状態になって、それが不安だったり、そのころお母さんが危篤(きとく)状態になったことで辛く、精神的に落ち込む時期が続きました。そういうときにどうしても薬物が頭をよぎるので、その代わりにアルコールを求めてしまうことが多くなりました。

©文藝春秋

 以前はどれだけ飲んでも意識がなくなるなんてことはなかったのに、あまりに量を飲むと意識が朦朧(もうろう)とするようになっていました。

 そんな日がしばらく続くうちに体の調子が悪くなってきて、あるとき急に胃がだれかにつかまれているかのように痛くなったんです。おかしいな、おかしいなと思っているうちに背中まで痛くなってきたので、人間ドックで検診を受けたんです。

 急性逆流性食道炎と診断されました。原因はやはり飲みすぎでした。

「アルコールは合法ドラッグなんです」

 先生の言葉がリアルに響いてきて、怖くなりました。

 先生はぼくが検査に行くたびに毎回のように「清原さん、お酒の量はどうですか?」と聞いてくれます。「お酒は飲まないほうがいいですよ。コンビニに売っているアルコール1%以下のお酒などは特に気をつけたほうがいいです」と注意してくれます。それでもこれは法律で禁じられているわけではないので、「もし飲む場合は体に入れる量をコントロールしてください」と言われているんです。

 それからは、ぼくは糖尿病も持っているのでウィスキーをハイボールにしたり、それでも飲みすぎてしまうときはウィスキーのロックを数杯飲むていどにしていました。

 また少しずつお酒の量を減らしていたんです。

 そんなときにあの銀座での騒ぎを起こしてしまいました。