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「清原、銀座で大暴れ」執行猶予中の“泥酔騒動”で警察沙汰…薬物依存症に苦しむ清原和博がアルコールに溺れたワケ

『薬物依存症の日々』より #2

2023/08/02

source : 文春文庫

genre : ニュース, スポーツ, 社会

note

『清原、銀座で大暴れ』

 あの日はジャイアンツ時代の担当記者と久しぶりに会って、いろいろと懐かしい話をしたんです。彼は酒を飲みますし、ぼくも楽しいお酒でついつい飲みすぎてしまいました。ただ彼は家が遠いということもわかっていたので、ぼくは「先に帰れよ」と遅くならないうちに別れたんです。そこまではよかったんですが、なんとなくぼくは家に帰りたくなくて、そこからまた知人と飲みにいってしまったんです。

 ずっと酒を飲んでいたころであればそんなことでは酔わないんです。ところが量を減らしていたところに急に多くの酒を飲んだので、酩酊状態になってしまいました。

 もう家に帰ったほうがいいという知人と、まだまだ酔っ払ってなんかいないというぼくがもみ合いになり、ぼくが暴れたところで警察のご厄介になったという始末でした。

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『清原、銀座で大暴れ』

『清原、警察沙汰』

 これは週刊誌に報じられました。ぼくのことをサポートしてくれてきた人、ぼくのところに戻ってきてくれた人、いろいろな人に心配をかけました。

 やはり精神的な逃げ道というのは落とし穴が多いんだなとつくづく思います。

覚せい剤取締法違反で逮捕されたときの清原和博氏 ©文藝春秋

 薬物依存症とうつ病を治療していくなかで、どうしても感情の浮き沈みが激しくて、元気だなという日もあれば何もやる気が起きなくて家にいる日もあります。些細(ささい)なことで精神的に左右されてしまって、その揺れをまぎらわすためにお酒を飲みたくなるんです。

 たとえば去年の12月、八王子で開催してもらった野球教室のイベントがありました。そこにはデーブさんら球界の先輩後輩たちが集まってくれました。すごく嬉しかったのですが、ひとつだけ寂しかったのが、ぼくにはユニホームがないことでした。知人が特別にオリジナルのものをつくってくれたのですが、デーブさんは楽天のユニホームだったし、みんなそれぞれが過去に所属した、もしくは現在所属しているチームのユニホームを着ていました。

 それを見ていて急に寂しくなったんです。

 ぼくには結局どこの球団からも使用許可がおりなくて、ユニホームを着ることができなかった……。そういう現実がすごく胸に突き刺って、またたくさんお酒を飲んでしまいました。ほんとうに些細なことがきっかけだったりするんです。

 ただ苦しいときにお酒を飲んでも結局は何も解決しません。だから理想的なのは、楽しいことや嬉しいことがあったときに、ほどほどに飲んで、うまくアルコールと付き合っていけることなんです。それはわかっているんですが、なにしろぼくは昔から「ほどほど」というのがなかなかできなくて……。それでいろいろな人に迷惑をかけてしまうんです。

夜の12時前に「もう帰るぞ」と言ってくれる友人の存在

 銀座での騒動から少し経ってから、佐々木も心配して電話をくれました。

「ちょっと飯食おう。事情聴取や」

 そういうことで久しぶりに食事をしました。当日はお酒も少し入りましたが、あれはまだ夜の12時になる前だったか、佐々木が急に立ち上がって「もう帰るぞ」と言い出したんです。

©文藝春秋

 2人で飲むときはいつもかなり長くなるので、ぼくは「え? もう?」と呆気(あっけ)にとられました。「まだ、ええやろ?」とぼくがなかなか帰らないでいると「だめだ。お前はあと3カ月で執行猶予が明けるんだから」と言って、ぐずっているぼくを強制的にタクシーに乗せて、自分の家とはまったく別方向のぼくのマンションまでわざわざ送ってくれたんです。

 そのときは「なんで? なんで?」とごねていましたが、あとで冷静になって考えてみて、ほんとうにいい友人だなあと感謝しています。

薬物依存症の日々 (文春文庫)

薬物依存症の日々 (文春文庫)

清原 和博

文藝春秋

2023年8月2日 発売

「清原、銀座で大暴れ」執行猶予中の“泥酔騒動”で警察沙汰…薬物依存症に苦しむ清原和博がアルコールに溺れたワケ

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