今季のボンマティは所属のバルセロナでも獅子奮迅の活躍を見せて、国内リーグ優勝とUEFA女子チャンピオンズリーグ制覇の立役者となった。もちろんバルセロナでも人気選手の1人で、4月にバルセロナを訪れた際、カンプノウの正面入り口には男子選手のレバンドフスキや前出のプテジャスらと並んで、彼女の巨大な写真が掲出されていた。
W杯でも好調を維持していて、ザンビア戦でもゴールこそなかったものの鋭い突破やスルーパスで相手を混乱に陥れ、豊富な運動量でチームの攻撃リズムを作り出していた。この試合にはプテジャスも先発していたが、まだ試運転中といった感じでぎりぎりまで体を張ったプレーは見せず、前半のみで交代。つまり今のスペインの司令塔はプテジャスではなく、完全にボンマティが担っているのである。
スペインが5-0でザンビアを下し、日本とともにグループリーグ突破を決めた試合後、戦いを終えたばかりの選手が記者の質問に答えるミックスゾーンへと直行した。
「2、3問だけにしてくれるならかまいませんよ」
ボンマティに、日本の長谷川唯について聞いてみたかったからだ。
というのもこの2人、いろいろと共通点が多いのである。
ボンマティがトップ下か右サイドハーフ、長谷川がボランチというポジションの違いこそあれ、ともにチームの攻撃のキーマンであるのはもちろん、小柄で(162センチと157センチ)、同年代で(25歳と26歳)、プレー時の長めのポニーテールと大きな瞳が特徴。決定的なパスを出すだけでなく自分で突破できるプレースタイルもほぼ同じ。
ミックスゾーンでしばらく待っていると、ボンマティが姿を現した。
「アイタナ、英語で質問してもいい?」
と声をかけると、彼女も英語で、
「今夜は寒いので2、3問だけにしてくれるならかまいませんよ」
と気さくに応じてくれた。
この夜のオークランドはかなり冷え込み、気温は5度を下回ろうとしていた。厚手のジャケットは羽織っていたが下は試合用のトランクスのままなので、体調管理を考えれば吹きっさらしに近い場所であまり立ち止まりたくないのは当然だ。短時間でも質問に答えようとしてくれるだけでありがたいと思わなければならない。