それに対して、睡眠――覚醒リズムを基に休憩時間を設定した取り組み後は、事故件数が半数に減り、その後数カ月間経っても、その件数は増加しませんでした。
睡眠――覚醒リズムによる眠気は、安全で確実な仕事の妨げになりますが、その仕組みを理解して仕事のスケジュールを少し変えるだけで、より安全に仕事をするために利用することもできるのです。
カフェインの摂取は、睡眠中の歯ぎしりを招く
眠気覚ましにコーヒーなどのカフェイン飲料を飲むことがありますか?
普段、飲まれているカフェインは、眠気覚ましになっていますか? そのカフェインが、翌日の眠気の原因になっていたらどうでしょうか。
眠気覚ましにカフェインを摂取するという認識を持っている人は多いですが、実は、カフェインに眠気を覚ます作用はありません。眠気を吹き飛ばすような作用があるのではなく、脳が眠いまま眠れなくなるのがカフェインの作用です。
私たちが朝目覚めると、脳脊髄液の中に、睡眠物質プロスタグランディンD2が溜まっていきます。目覚めた状態で時間が経過するほど溜まっていき、脳の外側を覆っている、くも膜のアデノシンの濃度を上昇させます。
アデノシンという名前は、アデノシン三リン酸(ATP)という名前で聞いたことがある人もいるかもしれません。ATPは、私たち生体のエネルギー源です。
これが日中の活動でエネルギーが燃やされて形を変え、最終的にアデノシンになって睡眠物質として働きます。エネルギーが代謝された産物が睡眠物質として働くという、とても合理的な仕組みになっています。
アデノシンは、脳の中に多く存在し神経を抑制する役割をもつGABAの働きを促進します。GABAは、脳を目覚めさせているヒスタミン神経を抑制します。この働きによって、脳は眠るのです。
このうち、カフェインが作用するのが、アデノシンがGABAの働きを促進する部分です。カフェインはこれをブロックするので、GABAによる神経の抑制が働きにくくなり、ヒスタミン神経が抑制されません。