阪田 高校入学がきっかけです。同じ中学から来る子が1人しかいなかったから、「今までの私を知らない人ばかりだから、自分をさらけ出すならきっと今だ」と思って。あとは、こんなにも昭和が好きなのに、隠して生きていくのがしんどくなったんですよね。
それでも、入学初日の自己紹介で、「昭和好き」と言うのはドキドキしました。
――そのときのクラスメイトの反応は?
阪田 良い意味で、あっさりしていました。同じ趣味の子はいなかったけど、「私のお母さんが昭和アイドル好きだよ」と教えてくれる子はいましたね。それがきっかけで、高校の文化祭に来ていた友達のお母さんと昭和の話で盛り上がったこともあります。
ただ、クラスメイトや仲の良い友達は受け入れてくれたけど、関わりの薄い同級生からは「あの子普通じゃない」「変な子」と陰口を叩かれました。
――勇気を出して公言したのに、それは辛いですね。
阪田 私に聞こえるよう、すれ違いざまにわざと悪口を言う人もいたから、それは腹が立ちました。でも、辛くはなかったですね。「言いたい人には言わせておけばいい」くらいに思っていました。
自分の好きなことをオープンにすることで、断然生きやすくなった
――中学時代は怖かったことを、なぜそこまで割り切れるようになったのでしょうか。
阪田 中学時代は「みんなと違うと嫌われるかもしれない」と思って、好きなものを好きと言えなかった。でも、いざ勇気を出して言ってみたら、私のことを知っている人はみんな受け入れてくれたんですよね。
「普通じゃない」とか言ってくるのは、面識のない子たちばかり。それで、「私の昭和好きを知って離れていく人は、そもそも友達じゃない」と思えるようになったんです。
それに、直接悪口を言っていた人たちも、私がSNSで話題になり始めた途端に態度を変えてきたんですよ。「俺のSNSも宣伝してよ、友達でしょ」と言われたこともあります。そのときは「調子いいなぁ」って呆れました。
――今は「昭和好き」を公言して良かったと思えているのですね。
阪田 「昭和好き」を公言してからのほうが、断然生きやすくなりました。好きなものを好きと言えて、好きな服を着て、好きな歌を歌って、それを周りの人たちも受け入れてくれる。よく知らない人の陰口なんか気にならないくらい、毎日が楽しくなったんです。(後編に続く)
撮影=深野未季/文藝春秋
阪田マリン(さかた・まりん)
2000年12月22日生まれの22歳。昭和カルチャーが大好きで“ネオ昭和”をコンセプトに、ファッションやカルチャーを発信する人気インフルエンサー。SNSでの総フォロワー数は約20万人。ネオ昭和歌謡プロジェクトとして「ザ・ブラックキャンディーズ」というユニットを結成し、音楽活動にも取り組んでいる。