最近の政治家は、官僚のご説明を何%理解できるかで、優秀さを競っているようなところがあります。何の意味があるのでしょう。
もっとも政治家にレクチャーする時、「そこからか!」と叫びたくなる時ほど悲しいこともありませんが。
官僚だって何でも知っている訳ではない
わかりやすくイメージしやすいように、警察でお話ししましょう。警察を司る大臣は国家公安委員長です。
では、国家公安委員長が、凶悪犯の逮捕の仕方に関して、官僚よりも詳しくなければならないのでしょうか。そんな訳はありません。だいたい、当の警察官僚だって、実際に凶悪犯の逮捕なんかしません。実際に現場の仕事を行うのは、ノンキャリアの官僚。この場合は現場の刑事です。凶悪犯の逮捕の仕方を知らないのは、政治家もキャリアと呼ばれる高級官僚も同じです。
この事情は、財務省でも同じです。財務省のキャリア(幹部候補の高級官僚)にしても、ノンキャリ(その他の職員)に依存しています。局長~事務次官と出世するキャリアが、税務署の職員より税に詳しいなどありえません。
予算を司る主計局にしても同じ。財務省主計局には司計課と呼ばれる部局があって、原則としてノンキャリしかいない課です。本当に国家予算を隅々まで知り尽くしているのは、この人たちです。
冗談で、「記者会見で政治家の大臣が質問に答えられないと、後ろの事務次官を振り向く。次官が答えられないと横の局長を振り向き……最後に振り向いた人は壁しか見えない」と言われます。
実際にはそんなことはありません。基本的に大臣が答えられるように想定問答を仕込むのが高級官僚の仕事ですし、仮に大臣が答えられなくても次官がカバーすれば終了です。
実際、「国民福祉税」をぶち上げた細川護熙首相は記者の質問に何も答えられず、横にいた斎藤次郎大蔵事務次官がすべて答えると言う場面がありました。もっとも、官僚が答えに困るような鋭い質問を記者が繰り広げた場面を思い出せませんが、聞く方の勉強不足でしょうか。
キャリア官僚が政治家の役割を担っている
閑話休題。
今の日本では、政治家がだらしないから、キャリア官僚が政治家の役割を担っていて、本来の官僚の仕事はノンキャリが行っているという本末転倒の状態にあります。政治家が本来の仕事をこなしていたら、キャリア官僚などいらないのです。
ところが、菅直人氏はじめ民主党政治家は、官僚に対抗できる知識を何でもかんでも知らなければいけないという強迫観念に駆られてしまいました。それこそが官僚の付け入る隙でした。(#2に続く)