「中国太郎」の異名を取る江の川。広島県と島根県の県境を流れて日本海に注ぐその川に、沿って走る鉄道路線がJR三江線だ。

広島県内をゆく。大半の区間で江の川に沿って山に張り付くように走る。集落も見られないような区間も多い(信木~式敷)
©共同通信社

 車窓からは江の川の雄大な流れと、中国山地の山並み、そして当地名物“石州瓦”の赤い屋根が印象的な山間の集落。1両編成のディーゼルカーがゆっくり走って約3時間半かけて、江津駅と三次駅を結ぶ。そんな、日本でもっとも利用者の少ない路線としても知られた三江線が、ついに今年の4月1日に廃止される(最終運転日は3月31日)。16枚の「絶景写真」とともに、三江線の旅をお届けします。

三次の市街地に向けて走る江の川を渡る三江線。紅葉が見頃の尾関山公園から見下ろす(粟屋~尾関山)

全線開通まで45年かかった紆余曲折の路線

 三江線の最初の区間の開通は、なんと1930年。日本海側の江津〜川戸間だった。それから1937年までにほぼ中間付近の浜原駅まで延伸。しかし、戦争の激化で残りの工事は中断されて、全線開通は戦後に持ち越されてしまう。国鉄の赤字やらダム建設計画との調整やら、紆余曲折を経て全線開通したのは最初の開通から実に45年も経った1975年のことだ。

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石見地方の特産・石州瓦を使った赤い屋根の集落を見ながら(鹿賀~因原)

 ところが、もうその時点で中国山地はクルマ社会。時間のかかる三江線を利用する人は少なかった。

「もうずっと三江線はガラガラ。昼間なんて誰も乗ってないよ。学生さんも最近はスクールバスだしね」

駅の周辺、わずかな平地部に田畑や小さな集落が点在。1両編成の三江線列車はその合間を縫うようにゆく(石見川越~鹿賀)

 浜原駅の近くに暮らす沿線住民は、こう苦笑い。日本一のローカル線、廃止になるのも当然の流れ、なのかもしれない。でも、そんな三江線も廃止を控えて今は大賑わい。普段なら1両編成のところを2両や3両つないで走ることも多い。日中、1時間半ほどの長時間停車がある石見川本駅では、町役場の人たちが集まってお出迎え&お見送りもしてくれる。地上20mの高さの高架橋上にホームがある“天空の駅”宇都井駅では、乗りに来た人たちがこぞって撮影に興じるシーンも。

江の川を渡るシーンは三江線のハイライト。2両編成での運転は廃線を控えて乗客が急増したことへの対応(伊賀和志~宇都井)