文春オンライン

ビッグモーター予備軍は全国にウヨウヨ…日本の中小企業で「理不尽な左遷」が横行してしまう根本原因

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 企業, 社会

note

報告書はこのアットで示されたノルマ重視の方針が不適切な保険金請求を行うことによって営業目標を達成しようとする者が増加したと見ている。そしてこう証拠を挙げている。

「実際、本調査においても、経験の浅い工場長を中心に、工場長会議で追及を受けることがプレッシャーとなり、過大見積り等の不適切な行為に手を染めるようになった旨説明する者が少なくなかった。その一方で、アットを始めとする営業成績を過度に重視した昇格人事が行われていたため、工場長の中には、酒々井店の工場長を務めていたGのように、出世欲から、自ら率先して車両の損壊行為に及ぶだけでなく、部下のフロント従業員にもこれを強いるなどまでして営業成績向上を図る者も現れるようになった」(報告書、原文ママ)

もっとも事故車両の工賃は対象車両の損傷状況によって決まるものであり、中古車の買取・販売部門の営業職と違い、いくら努力しても工賃が増える性質の部門ではない。

ADVERTISEMENT

降格処分頻発で従業員は萎縮、経営陣に盲従の風土

過度のノルマを課すこと自体がおかしい。かつてソーラーパネルを販売していた会社の営業マンが屋根のないアパートに住む老人にパネルを販売し、訪問販売法違反で逮捕されたことがある。過度のノルマは犯罪に走らせてしまうが、同社の工場の従業員もノルマのプレッシャーから“犯罪”に走ってしまったことになる。

しかし従業員の中には、そんなことまでして出世したいとは思わない社員もいただろう。そんな社員を突き動かしたのがもう1つの「降格処分」だった。ノルマ達成による昇格がアメであるとするなら、「降格」はムチである。

降格処分の実行者は、次期代表取締役社長への就任が確実視されていた兼重宏一副社長だった。2020年から2022年にかけて延べ47人の工場長が一担当のフロントへの降格処分を受けている。

通常の降格人事は、人事評価制度に基づいて、3期連続で一定の評価基準を下回った場合に降格対象になる。もちろんその過程で「このままでは降格になるよ」と、本人の自覚と奮起を促すのが一般的だ。