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《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》ビッグモーターを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか

2023/07/28

genre : ニュース, 社会

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 街路樹も枯れる勢いで急成長した俺たちのビッグモーター社が、ついに公式の記者会見に追い込まれてしまいました。創業者で代表取締役社長であった兼重宏行さんが、一連の騒動の責任を取って辞任。新たに就任した経営者が国土交通省の聞き取り調査にようやく応じたという流れになったようです。

 また損保大手3社のうち、出向者を出しビッグモーター社経由の大口保険獲得をしたと見られる損保ジャパンも金融庁に本件絡みで虚偽の報告をしていたことが判明したことで、こりゃもう業務改善命令ではなく業務停止命令待ったなしだよねという流れになっていますね。謹慎ではなく切腹でお願いします。

中古車流通大手が民間車検制度を悪用することの影響

 事件の経緯は、いままでさんざんビッグモーター社からの広告で潤ってきたマスコミが盛大に手のひら返しをしている実況生中継が行われておりますので、皆さん各自、その辺を見ておいていただければと存じます。

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©時事通信社

 大変な大騒ぎになり収まる気配もないわけですけれども、それもそのはず、国民にとって自動車は文字通り移動の足であり、その中古車流通大手のビッグモーター社が事故車両に関して保険金の不正請求をしたり、民間車検制度を悪用したりすれば、自動車(モビリティ)行政の根幹の信頼が揺らぐことを意味します。騒いで騒ぎ足りないってことは本件については無いのかなとすら思います。ええじゃないか。

「遅刻で1000円」「殺すぞ」ビッグモーター“地獄職場”
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b6534

 どんなに慎重で上手なドライバーでも車を運転していれば事故ることは確率的には必ず発生する以上、何事が起きても自身の支払い能力を超えて賠償しなければならなくなる危険を考えて損害保険の一種である自動車保険に入ることは各都道府県で義務化が進んでいます。最近では、チャリも自転車保険加入を義務付けする県も出るぐらい、事故に対する被害者への弁済・補償はマストの世界になってきています。

みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていた

 ただ、万が一事故を起こした際に、自分の自動車も含めて発生する事故対応や損害の弁済・補償に対し、損害保険の事故査定はドライバーが誰であれプロに任せざるを得ません。そこへ、今回は事故評価をする保険会社から強く斡旋(入庫誘導)されるビッグモーター社の板金部門や工場・営業所と内々で癒着があれば、事故を起こした当人がそれが妥当な事故査定なのかは分からないことになります。

 つまり、損保ジャパンなど損保会社とビッグモーター社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです。うっかり多額の保険金を被保険者に払いたくない損保会社と、本来は職業倫理に基づいてシビアかつ公正に事故車の査定を行う、麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ。まさにプロの世界、秘密の花園、サンクチュアリ(聖域)であります。