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《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》ビッグモーターを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか

2023/07/28

genre : ニュース, 社会

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 同様に、今回のビッグモーター社の民間車検制度が実質的に悪用され、国土交通省が顔真っ赤になるのも当然です。また俺のお膝元で派手にやらかしやがって。車検なんてその辺で走ってる車全部が対象ですから、そこらじゅうで適当な感じで車検やっちったオンボロが走ってる可能性は否定できず、車検制度全体に対する不信感にならないように手当てをし、過去に遡及して、車検をやり直さなければならないかもしれません。

 21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、ビッグモーター社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります。

 最後まで、ビッグモーター社や創業家で当時経営者だった兼重宏行さん、宏一さん父子が今後民事刑事両面から責任を問われて最後まで再検査や補償を行うのかが見ものです。

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 やっちゃえ再検査。

 これに関わった自動車整備士も、悪質なものは全員資格剥奪になってしまいます。大変なことだよねと思うんですが、そもそも車検できた車両を見てもいなかったレベルから意図的に部品を外すなどして不正に車検費用を請求したレベルまであらゆる犯罪のデパートになっていたことを考えれば、ケツ毛抜かれるまで追い込まれても仕方がないことなのかなと思います。

今回一番損をしたのは…

 さらに、損害保険の保険金の不正請求に関しては、過去の事例では武富士事件(99年)やグッドウィル事件(07年)、商工ファンド事件(14年)と同様に、事件発生からの営業停止処分、そこから会社更生法申請後に、被害者への補償を充分にすることなく大金を持った創業者が資産を逃避させ、民事裁判で長く争われるも逃げ切られるという事案も想起されます。単に長年の悪事を暴くというだけでは駄目で、これらの悪質な経営を行った立役者から、過去やらかした分の責任を取らせて私財を吐き出させるまでが遠足ですよとも言えるのです。

 ビッグモーター社についても、豪邸がどうだとか、豪邸に生えている樹木に除草剤を撒けなどと中傷の対象になってしまっていますが、個人的には組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです。

 日頃あれだけ検査業務で銀行マンを奔走させている金融庁なのだから、さぞかしきちんと指導してくださるのは間違いないだろうと思うのですが、同様に、今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか。客観的に見て、お前ら嘘ばっかりついとるやろ。

 今回の不正請求に関しては、実際のところ一番損をしたのは損保ジャパンではなく、損保ジャパンに加入していて問題を起こしていない一般契約者ということになるからです。まともな契約者・被保険者が、行政の怠慢とも言える損保会社のやらかしの犠牲者となることに他ならず、鎌倉幕府の伝統に基づいて族滅の処分を下して欲しいと願うところです。