「賄賂を渡したという認識はない。社員を僕は信じますよ」
大手出版社「KADOKAWA」の角川歴彦会長(79)が東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職疑惑について、賄賂を否定したのは9月5日のことだった。
しかしその翌日、東京地検特捜部はKADOKAWAの元専務・芳原世幸容疑者(64)と馬庭教二容疑者(63)を贈賄容疑で逮捕。千代田区の飯田橋にあるKADOKAWA本社に家宅捜索が入りメディアも押し寄せる事態となった。
社内ではAOKIの青木拡憲元会長の贈賄疑惑が取りざたされたころから「次はウチじゃないのか」と不安の声があがっていたという。KADOKAWA関係者が匿名を条件に内情を話す。
「オリンピックに適任」の理由とは
「AOKIの事件を受けてKADOKAWAでも『ウチは大丈夫なのか?』と不安に思った人がいたようで、弁護士を入れた社内の調査委員会が開かれました。歴彦会長に対しても調査が行われましたが、コンサルタント契約の報告こそ受けていたものの贈賄を認識していなかったとして“シロ”と判断されたようです。社内調査で会長を厳しく調査するのは難しいですからね……。一方で逮捕された芳原容疑者と馬庭容疑者の2人はひどい詰め方をされたようで、『会社を信じられなくなった』と激怒していました。2人にしてみれば、会社のために動き回ったのにすべての責任を押しつけられ、『トカゲのしっぽ切り』のように感じたんでしょう」
芳原容疑者はリクルートで『ゼクシィ』『カーセンサー』などの編集長を務め、KADOKAWAでも専務まで上り詰めた実力者。馬庭容疑者も『関西ウォーカー』の編集長を務めたベテランだ。社内で能力を買われており、情報誌は自治体などとのやりとりも多かったことから、オリンピックについても「適任」とされたという。
そんな2人の容疑者が所属していたのが、2015年に開設された「2021年室」という部署だった。