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「2021年室は歴彦会長の肝いりで作られた新組織で、名前の由来は『2020年の東京オリンピックの後』という意味のようです。未来のために出版だけでなく新たな事業分野に挑戦しようという趣旨で、オリンピック事業のほかに大阪万博などにも関わり、会社の“戦略本部”のような位置づけでした。ただ社内的には正直『何をやってるかよくわからない部署』でもありました」(同前・KADOKAWA関係者)

東京オリンピック組織委員会の元理事・高橋治之氏 ©️時事通信社

 KADOKAWAがオリンピックスポンサーに就任したのは2019年4月で、高橋容疑者サイドに対する合計7600万円の支払いの初回はその年の7月と見られている。しかし「2021年室」と東京オリンピック、そして自民党とのつながりはさらに以前から始まっていた。社会部記者が解説する。

「ライザップからの過剰な接待で辞任した平田竹男氏が代表だった内閣官房オリパラ推進本部のイベント事業を受託したり、オリパラ組織委員会の広報局に人を派遣するなどKADOKAWAはオリンピック事業に食い込んでいました。そもそもKADOKAWAは自民党との距離が近く、ドワンゴが開催した『ニコニコ超会議』に当時の安倍晋三首相が登場したり、2020年に移転した『ところざわサクラタウン』のオープンセレモニーにも当時の菅義偉首相がサプライズでメッセージを送っています。現社長の夏野剛氏(57)も、内閣の規制改革推進会議の議長を務めています」

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2013年の「ニコニコ超会議」で自衛隊の戦車の上から迷彩服で手を振る安倍晋三首相(当時) ©時事通信社

「やはり歴彦会長のプレッシャーが…」

 とはいえ政治に近づいてオリンピックの関連事業を受託することと、賄賂を支払ってまでスポンサーになることの間には大きな距離がある。逮捕された芳原容疑者と馬庭容疑者を追い詰めたのは一体何だったのか。別のKADOKAWA関係者は事情をこう推測した。

「それはやはり歴彦会長のプレッシャーだと思います。会長自身が事件に関与していたかどうかはわかりませんが、会長がオリンピック事業に力を入れていたのは紛れもない事実。そこで失敗すれば会長の機嫌を損ねることは確実で、悪くすれば実力者の2人といえども左遷される可能性すらある。『オリンピックに食い込みたい』という会長の希望を叶えるために無理をしたのだとすれば、ちょっとかわいそうな気はしますね」