「弔問客は250名ほど。マクロン夫人、カトリーヌ・ドヌーヴなど著名人の姿もあった。外にはスクリーンが設置され、ファンのために葬儀の中継も行なわれていた」

 そう語るのは、7月16日に亡くなった歌手・俳優のジェーン・バーキン(享年76)を40年近く、取材者として、また友人として付き合ってきたジャーナリスト・翻訳家の村上香住子氏だ。パリで行われた葬儀にも参列した彼女が今回、「文藝春秋」で、彼女との長年の交流と秘話を語った。

村上氏とジェーン(村上氏提供)

世代を超え、国境を越え、自由に生きて、皆に愛を与え続けたバーキン

 エルメスのバッグ“バーキン”で知られ、ファッションアイコンとして世界中から絶大な支持を得たジェーン・バーキン。彼女はまた、『007』シリーズの作曲を手掛けたジョン・バリー、歌手のセルジュ・ゲンズブール、映画監督のジャック・ドワイヨンなど、数々の著名人と浮名を流した“恋多き女性”としても知られている。

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若者のファッションアイコンだった ©時事通信社

 ただ、村上氏によると、「もちろんスタイリッシュでチャーミングな女性ではあるのだけれど、それは彼女の表層に過ぎない。世代を超え、国境を越え、自由に生きて、皆に愛を与え続けた人だった」という。

 ジェーン・バーキンの訃報を知った日、村上氏は鎌倉の海岸で友人と過ごしていた。

「夕方、自宅へ戻ると、彼女の訃報が飛び込んできた。涙が溢れるのを止めることが出来なくなったが、ふとジェーンだったら、こんな姿は大嫌いだったに違いない、と思い始めた。どんな時も誇り高く、他人に媚びず、凛として格好よく生きた。時に重い病に打ちのめされながらも、何度も立ち上がって、舞台に戻ってきた。旅立ちを見送るのに、涙は相応しくない」