「父親の財産が弟に渡ることは仕方ないかもしれませんが、父親が一言の相談もなく遺言書を作成したのはショックでした。金額の問題ではありません。父親が亡くなった時は、遺留分ぐらいはもらおうと思っています」
遺留分とは、法定相続人は、遺言書で財産の受け取り人から外されても一定の財産をもらえる権利のこと。
阿保税理士はこう話す。
「親は、生前に特定の子供と相続の話を進めてはいけません。他の子供が納得していなければ、必ずあとで揉めます。遺言書に書き残しても揉めます」
きょうだい4人、妻の実家相続
50代半ばの男性サラリーマンは、埼玉県にある妻の実家の敷地に新たに家を建てて住んでいる。実家と敷地は父親が所有し、新たに建てた家は男性が所有している。
男性の妻には、弟が2人、妹が1人いる。3人とも結婚して子供もいて、妻の実家近くの賃貸マンションで暮らしている。
男性は義父母とも義弟妹とも仲が良く、義弟妹の家族も来て実家で一緒に夕食を食べることも多い。
男性はこれまで相続のことを考えたことはなく、揉めるとも思っていないが……。
しかし親子・兄弟の仲が良くても、義父母が亡くなった時、子供4人が円満に相続することは大変難しい。
男性が所有する家の敷地部分を妻が相続できれば、男性夫婦だけは落ち着く。しかし、義父母の実家は他の弟妹3人のうち1人しか相続できない。残り2人はそれに見合った額の預貯金等を相続できない限り、納得しない可能性がある。
実家を売ったお金を弟妹3人が分けた時は、分配額よりも、妻が相続する敷地部分の価値のほうが高くなる恐れがあり、弟妹3人全員が納得するのは難しいかもしれない。しかも実家を売ってしまえば男性の家は大変窮屈になる。
実家を売らずに3人の弟妹が共有で相続することもできるが、不動産の共有はリスクが大変高い。
「共有相続」のリスクとは
相続不動産のコンサルティングを手掛けるプロサーチの松尾企晴社長はこう警告する。