スマホがロックされたままでも月額料金やサブスク契約は続くし、正常に初期化できないばかりに中古売却が選べなくなることも。自分の死後にスマホを負の遺産にしないためにやるべき対策を考えたい。(全2回の2回目/最初から読む)

筆者提供

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契約の実態が掴めないと、1ヶ月あたり6000円の損失

 故人のスマホ問題を考えるとき、スマホが開けないことで有料契約の処理が遅れるコストも見落とせない。持ち主が亡くなってもスマホが絡むサブスク契約や通信通話契約は止めない限りは請求が続く。

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 サブスク契約はクレジットカードや銀行預金のログを糸口にして個別に対応することもできるが、スマホが開けないと実態の把握に時間がかかるため、月額の支払期限を数度越えることはザラにある。

 通信通話契約はスマホの状態と無関係に解除できるが、デジタル遺品の全体像を掴む前の解約は避けたほうがいい。電話番号が使えなくなると二段階認証のパスワードを受け取ることが困難になり、サブスクだけでなく、SNSや他のあらゆるサービスの実態把握や解約で足止めを食らうことになるからだ。実際の相続の現場でも、安心して電話番号が手放せる状況になるまで月額料金を支払い続けるケースが増えている。

 以上を踏まえ、解約処理が遅れる損失を1ヶ月単位で考えてみたい。

 サブスク契約は、アプリ情報メディア「Appliv」を手がけるナイルが2024年3月に発表した調査を参考にした。調査によると、1ヶ月あたりにサブスク契約にかける費用は全体の75%の人が3000円未満となるという。金額ごとの回答でみると「1000円以上~3000円未満」がもっとも多いので、仮にこの項目の中央値となる2000円を月単位の損失額としたい。

Appliv(ナイル)によるサブスクの利用実態調査より

 端末の分割料金を除いたスマホの通信通話契約の費用は、MMD研究所が2024年9月に実施した「通信サービスの料金と容量に関する実態調査」によると、大手4大キャリアの平均で4118円になる。

MMD研究所「通信サービスの料金と容量に関する実態調査」より

 月額費用を4000円と丸めて、サブスク契約とあわせれば1ヶ月あたり約6000円の損失が発生するといえそうだ。

 額としてはそこまで大きくないが、遺族の負担感はそれ以上のものがあると考えておいたほうがいい。わずか550円のサブスク契約を突き止めるために、故人のお金の流れを1年ぶん洗い出し、クレジットカード会社やサブスク運営会社とやりとりし、支払いを止めるまでに丸々2ヶ月かかったという人もいる。