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知っておきたい安全知識(2)外傷の応急手当

 山でケガをした場合、救助隊が到着するまでには、どうしてもある程度の時間がかかってしまう。そこで救助を待つ間に、傷の痛みを和らげ、傷が悪化しないようにするための処置が応急手当だ。外傷で最も多いすり傷や切り傷の応急手当は、圧迫止血法によって出血を止め、きれいな水で傷口を洗浄し、ワセリンなどで傷口を保護する、というのが基本的な流れとなる。捻挫や骨折、打撲などの場合は、次の「RICE処置」で対処する。

Rest(安静):ケガの状況に応じた楽な姿勢をとって体を休ませる。

 

Ice(冷却):患部を冷やすことで発熱や腫れを抑止し痛みを緩和する。

 

Compression(圧迫):内出血や腫脹を抑制するため、三角巾やテーピングなどで患部を圧迫する。 

 

Elevation(挙上):患部を心臓よりも高い位置に上げて、腫脹を防止する。

 具体的な応急手当の方法については、負傷箇所によってやり方が異なるので、山岳団体などが主催する講習に参加したり、セルフレスキューの技術書を読むなどして、各自で学習しよう。なお、軽微なケガなら、応急手当をしたうえで自力下山も可能かもしれないが、無理して行動することによって傷を悪化させたり、さらなる危険を招いたりすることもある。

 ダメージの程度と今後の行程を考慮し、無理そうだと判断したら躊躇せず救助を要請することだ。

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知っておきたい安全知識(3)道迷いのリカバー

 山に登れば、誰もが多かれ少なかれ、道に迷うものだ。しかし、注意していれば間もなくルートを外れたことに気づき、引き返すことで正しいルートに戻ることができる。「山で道に迷ったら引き返せ」というのは登山の鉄則であり、登山者なら誰もが知っていることであろう。だが、ある程度の経験を積んだ登山者でも、それがなかなか実行できない。ルートを外れれば、どこかの時点で必ず気づくはずなのだが、そこで行動を停止せず、さらに先へと進んでしまう。これが道迷い遭難に陥る典型的なパターンだ。

 不審に感じながらも引き返せないのは、異常を感知できずに正常な範囲のものとして処理する正常性バイアス、物事を自分の都合のいいように捉える楽観主義バイアスなど、さまざまな認知バイアスが作用するからである。とくに道迷いは下りで起こりやすく、登り返すことの体力の消耗度や、日没までの時間的制約などを考えると、「どうにかなるだろう」と自分自身を納得させて、そのまま進んでいってしまう。しかし、たいていの場合はどうにもならず、道迷いの泥沼へとはまり込んでいく。 

 そうならないためには、「おかしいな」と感じた時点でストップして休憩をとり、地図を見るなり行動食を食べるなりして気持ちを落ち着かせてから、たどってきたルートを引き返そう。引き返せない場合は、焦ってあちこち歩き回らず、携帯電話が通じるところから救助を要請するのが賢明だ。