笑いを起こすという点で見れば、2018年「RIZIN.13」で行った大砂嵐金太郎対ボブ・サップは完璧だったといっていい。ファンが選ぶRIZINベストバウト(2015-2019)でも4位にランクインしている。
それから、「RIZIN.14」で、“世界最強の女柔術家”ギャビ・ガルシアが勝ち名乗りを上げたリングに乱入した神取忍。過去に二度も試合を組みながら、実現に至らなかった幻の対戦を要求する姿は、会場に大きな盛り上がりをもたらした。彼女のプロ魂には、ただただ脱帽した。
梅野源治の「YAVAYだろ」もそうだろう。真剣勝負だからこそ生まれる笑いは、RIZINの世界観を広げる、重要なピースだ。
「地獄のプロモーター榊原信行、ついに参戦決定!!」
社員が何百人、何千人といる会社なら話は別だが、RIZINは社員20人ほどの会社だ。だからこそ、社長である私が最大の営業マンであり、そして宣伝マンでなければならないと思っている。
その点では、自身のセルフブランディングについても考える必要がある。
私のパブリックイメージというと、「怖い人」「恐ろしい人」という声が圧倒的に多い。実際にはそんなことはないと思っているのだが、「表面上はすごくフレンドリーなのに、内心では何を考えているか分からない」なんて言われることもある。
この自著で大いに反論したいが、また怒っていると言われそうなのでやめておく。
冒頭のノーコメントおじさんもそうだが、相手の意表を突くようなアプローチや、意外な一面をのぞかせることで、印象が変わることはある。
2022年のエイプリルフールには、RIZINの公式Twitterに、何かの折に撮影していた、上半身裸にオープンフィンガーグローブ姿でファイティングポーズを取った私の画像がアップされた。
「地獄のプロモーター榊原信行、ついに参戦決定!!」という文字が躍り、合成なし、対戦相手募集、ラスボス降臨のハッシュタグがつけられたツイートには、様々な反応が寄せられた。
会社の代表がこんなことをする必要はない、という意見もあったが、こういう馬鹿馬鹿しいことをするのは嫌いではない。むしろ、立場に縛られずに馬鹿なことをやるのは必要なことだと思っている。
自ら表に出て立ち回っているが、本来はナンバー2向きだと思う。
私自身はキャスティングボードを握って、様々な調整事に奔走し、表には別の人が立って表現してくれるのが理想。本当ならPRIDE時代も、そういうポジションに就くつもりでいた。