2022年には、那須川天心×武尊戦を実現させ、総売上50億円超を記録――格闘技イベントのプロとして、これまでさまざまな興行を成功に導いた「RIZIN」の榊原信行CEOの仕事術を紹介。彼がどんなときも「笑い」を大切にする理由とは?

 初の著書『負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊』(KADOKAWA)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

ときには自ら笑いを取りにいくことも……RIZINのCEOである榊原信行氏の仕事の流儀をお届け(写真:本人提供)

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真剣勝負の先に笑いが生まれる

 「THE MATCH 2022」のメインイベントに据えた、那須川天心対武尊の交渉の過程で、「ノーコメントおじさん」は生まれた。

 実現すれば、世紀の一戦といっても過言ではない夢のカード。自らを“ノーコメントおじさん”と呼んだのは、試合開催をなかなか発表できずにいる状況を、マスコミに否定的に報じてもらわないようにするための策でもあった。

「今日こそ何か発表するんだろうな」という緊張感に包まれた会見の場を、少しでも和やかにするには、置かれた状況を逆手にとって笑いに変えるしかないと思った。

 ネット記事に、「榊原は今日もノーコメント」と書かれるのと、「ノーコメントおじさん、何も語らず」と書かれるのとでは、受け取る側のイメージも違うはずだ。

 この一件に限らず、どんなにしんどくても、上に立つ人間はニコニコしていたほうが良いと常に思っている。

 きっと、ほかの様々な企業のトップも同じように考えているのではないだろうか。

 難しくもない話を小難しく説明したり、あるいは、聞かれても答えられないことに終始無言を貫いたりして、それを渋い表情で受け取られるよりは、笑いに変えたほうが良い。

 私たちは、格闘技で単に泣かせたいと思っているのではない。

 大会が行われる数時間の空間のなかに、喜怒哀楽のすべてを持ち込みたいと思っている。そのなかでも、格闘技に笑いを持ち込めたら最強だ。

 ただ、笑いを引き出すというのは、ハードルも高い。