“手話での語り”と“女の情念”に挑戦中
怪談師は天職だと思います。あらゆる人に「怖い話」を届けていく――。もうこれ以外、今は考えられません。最近の子ども達は祖父母や両親に「悪いことをすると天狗に攫われるよ」なんて聞かされませんよね。でも、私は幼少期にそう脅されて、震えながらもすごくワクワクしたんです。図書館で子どもたちに怪談を語ると、やっぱり「ああ、怖い話が大好きなんだな」と伝わってくる。
お年寄りも同じで、老人ホームなどにお邪魔すると、皆さん少年少女のように瞳をキラキラ輝かせて怪談に聞き入ってくださいます。かつて読み聞かせてもらった懐かしい記憶が呼び覚まされるのでしょうか。時には大きな悲鳴も上がって……一種のデトックスになっているのかもしれませんね。
目下挑戦中なのは、手話での語り。手話には「この世」や「あの世」という言葉がないそうで、どう表現すれば伝わるかを学んでいるところです。女性怪談師としては、女の情念を描いた古典作品ももっともっと語っていきたい。どういった環境で育った女性だったのか、背景や感情にも思いを馳せながら、少しアレンジも加えて。
私にとって最も恐ろしいのは忘れ去られることなんです。幽霊さんも「忘れないで」と出てきますよね。怪談を誰かが語り継いでくれたら、肉体が消えても生きていける。怪談は私の存在証明でもあるんです。
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『牛抱せん夏が語る古典怪談~番町皿屋敷編』
2023年9月22日 18:30~22:00
朝日カルチャーセンター名古屋教室
詳細は
https://www.asahiculture.jp/course/nagoya/2474af18-e61f-07bf-8e7e-642faf089e72