すんなり東大に合格する頭脳があるのに、まともなご飯を食べることも運動もせず不健康に暮らしている人。正論をふりかざして、相手を思いやることなく論破する人。教養がない人は、知識があってもそれを行動に結びつけられません。
教養とはいわば、生きる力です。
新型コロナによるパンデミック、気候変動に伴う数々の災害など、私たちは今まさに、激動の時代を生きています。そういう世の中を、これから何十年も渡っていく子どもたち。長い人生を幸せに生き抜くには、教養という武器が大いに役に立つのです。
住宅ローンを組むのは生活困窮者!?
教養は単なる物知りではありませんが、土台になるのはやはり知識です。知識がなければ、それをつなぎ合わせてよりよい行動に結びつけることができません。
以前、ある大学生に「鉄道会社が新しい車両を買う時は、銀行からお金を借りる」と話したところ、鉄道会社のような大きな会社が銀行からお金を借りていることに驚いていました。銀行からお金を借りるのは貧しいからだと思っていたからです。資産がなければ銀行に借金はできない、銀行からお金を借りられるのは社会的な信用があるからだと説明するとびっくりしていましたが、私の方が驚いてしまいました。住宅ローンを組むのは、困窮した人だと思っていたのでしょうか……。
知識を得ることは、教養のある人になるための第一歩です。子どもに「なんで勉強しなきゃいけないの?」と聞かれたら、私なら「豊かな人生を送るためだよ」と答えます。いい学校、いい会社に入るのが勉強の目的ではないのです。
日本は1300年以上前から戦争を繰り返してきた
戦争についても同じ。まずは知識を得るのが教養に至る道です。
日本で戦争というと、太平洋戦争をイメージする人が多いでしょう。もう少しさかのぼって、日清・日露戦争を思い浮かべる人もいるかもしれません。でも実は、1300年以上も昔に朝鮮半島に軍隊を送り込んでいるのです(663年・白村江の戦い)。その後の元寇、秀吉による朝鮮出兵、江戸末期の薩摩藩とイギリス、長州藩とフランスの戦い、日清・日露戦争、日中戦争、太平洋戦争と、関わってきた戦争の数々を知ると、日本も戦争を繰り返してきたのだと実感します。