コガ 僕は蚊よけスプレーを塗ったりしますけど、ジェニーをはじめ現地の人はほとんど使わないですね。蚊取り線香やスプレーはお金がかかるというのがあるし、現地の人は何回もなっているので耐性があるのかもしれません。それでも、毎年マラリアで亡くなる人は多いので、危険だと思います。
マラウイでは何度も死を身近に感じた
――前回、ジェニーさんのお姉さんや義兄が亡くなっているというお話もありましたが、マラウイでは「死」を身近に感じましたか。
コガ 私がいた数年でも、親類や近所の人の葬式が何回かあって、40代、50代の若い世代が亡くなったケースが少なくありませんでした。
国立病院に行けば治療費は無料なんですけど、設備や薬が乏しいので結局、ちゃんとした治療を受けるには私立病院に行かなくちゃいけなくなるんです。でも、私立病院だとお金がかかるため、治療費が捻出できない人たちは大きい病気にかかるとそれが死に直結してしまうんです。
――貧富の差で医療を受けられるかどうかが決まってしまうんですね。
コガ 貧困と脆弱な医療体制ゆえ、小さい頃から親しい人がたくさん命を落とすさまを見てきたジェニーは、自分の生まれた村に病院を作る夢を持っているんです。私も、お世話になったマラウイの人たちに雇用を生み出すためにレストランを開きたいと思っていたのですが、日本から持ってきた500万円の貯金が半分以下になってしまったため、いったん日本に帰国してもう一度お金を貯めて再出発しよう、ということになりました。
今は僕が車関係の工場で派遣社員として働きつつ、ジェニーも今後は言語のことや子育てとの兼ね合いを見ながら仕事を探すことになると思います。
過去にジェニーを見た赤ちゃんが泣き出したことが
――マラウイにいた時はコガさんが「アジア人」ということで目立っていたというお話がありました。日本で暮らしている今は逆に、ジェニーさんたちが「アフリカ人」として注目を浴びている感じはありますか。
コガ ジェニーは前に2度、日本に来てるんですね。その時、ジェニーを見た赤ちゃんが泣き出したことがあったんです。赤ちゃんのお母さんは「ごめんなさい」と言ってすぐに立ち去っていきました。