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 もう1つ、東アジアの国防費のほかの国の平均値を見てみましょう。実は東アジア各国で、国防費がGDP2%に近い国はいくつもあるのです。韓国は2.48%ですし、シンガポールは2.81%、オーストラリアも2%弱です

 むしろ日本がこれまで際立って低かったということで、北朝鮮や中国、尖閣諸島や朝鮮半島という非常に危険なエリアを抱えていながら1%を維持していたこと自体が、世界的に見れば特異な事例だったということです。

日中関係と米中関係

 近年のニュース番組を賑わせている話題のひとつに、米中の対立があります。

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 この中で、米中の対立に日本が巻き込まれる、日本が米中の仲介をしてはどうかという問い立てがあるのですが、これは的外れです。その理由ははっきりしています。

 それは、尖閣諸島をめぐる日中の対立が、米中対立の原因の1つになっているからです。その理由を説明します。

 第一次尖閣危機(漁船事案)が起こった2010年の段階で、アメリカはまだ中国に対する宥和的政策、中国を協調的なアプローチで取り込もうという政策を捨てていませんでした。実際に尖閣諸島の漁船事案が起こったときに、尖閣のために米中関係を危険にすべきではないという議論が、アメリカでは交わされていました。

 それを変えさせてきたのが、ほかならない日本です。「ここで尖閣を失ったら南シナ海を失いますよ、尖閣と南シナを失ったら台湾を失いますよ、それでもいいんですか?」とアメリカに問いかけて引き込むかたちで、アメリカの対中政策を変えさせてきたわけです。よって、今になって日本が中立的立場だというのは、そもそも認識がおかしい。米中が対立していく道筋の中に尖閣諸島の問題があるのです。

 ですから、日本が米中対立と関係ないというのであれば、まずは尖閣諸島を捨てる覚悟が必要です。「尖閣諸島は中国のものでいいですから、我々は米中の間に立ちます」と意思表示しなければならないのです。いいところ取りはできませんよ、ということですね。

 尖閣問題については外交的解決をすべきだという論調もありますが、 2010年の漁船事案のときと、2012年の尖閣諸島国有化のときに、当時の民主党政権が外交的解決を試みています。自衛隊を前面に出さずに外交的な解決を図ったのです。

 しかし、中国は政府公船を継続的に派遣し、領海や接続水域にも侵入してきます。なぜこうなったのかという検証なしに、今後の外交解決の議論はできないのではないでしょうか。(#2に続く)