2015年10月、フィリピンパブのホステスとして働くフィリピン人女性・ミカと結婚した、ライターの中島弘象さん(34)。2017年7月に第1子が誕生したことで、生活は一変。初めての育児、言葉の壁、親族縁者の無心と綱渡りの家計……夫婦はさまざまな問題をどのように乗り越えていったのだろうか?
ここでは、中島氏がフィリピン人妻とのリアルな日常を綴った『フィリピンパブ嬢の経済学』(新潮社)より一部を抜粋。中島氏を悩ませた“義理家族への送金問題”を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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毎月20万円以上の送金
ミカが妊娠をしたのを機に、僕たち夫婦は今後の生活について真剣に考えるようになった。
僕は毎日、日雇いに出るようになり、ミカはお腹が大きくなるまでフィリピンパブで働いていた。僕は生活費を稼ぎ、ミカは産まれてくる子供のために少しでも金をためようと働いていたが、お腹がだんだんと目立つようになり、フィリピンパブの仕事を辞めた。
この時から、僕の収入だけで生活するようになった。ミカに、いくら貯金できたかきいてみた。
「お金全部フィリピンに送っちゃった」
貯金は、なかった。
稼いだ金の大半は、フィリピンに送金をしていたという。
「え!? なんでそんなに送ったの!?」
「しょうがないじゃん。フィリピンの家族大変なんだもん」
僕がミカから聞いていた毎月の送金額は10万円だった。だが、実際は毎月20万円以上フィリピンに送金していた。
日本といえど、月に20万円を稼ぐのは、簡単なことではない。それを丸ごとフィリピンに送っていたのだ。今まではミカが稼いだ給料から送っていたから何も言わなかったし、詳しくも聞かなかった。だがこれからは違う。僕たち2人だけではなく、子供も育てていかなければならない。
「いつまでもこんなに送金はできないよ。何のためにフィリピンパブで働いてたの? 子供のためじゃないの? どっちの家族が大事なの?」
「もうわかったから」
送金額の大きさと、まったく貯金していなかったことに驚き、互いに大きな声を出してしまった。
この時は、まだミカの姉の家での居候生活中だったから、ミカの姉と母に送金でもめているのを聞かれてしまった。ミカのお腹もだいぶ大きくなってきていた。