2015年10月、フィリピンパブのホステスとして働くフィリピン人女性・ミカと結婚した、ライターの中島弘象さん(34)。2017年7月に第1子が誕生したことで、生活は一変。初めての育児、言葉の壁、親族縁者の無心と綱渡りの家計……夫婦はさまざまな問題をどのように乗り越えていったのだろうか?
ここでは、中島氏がフィリピン人妻とのリアルな日常を綴った『フィリピンパブ嬢の経済学』(新潮社)より一部を抜粋。中島氏が妻・ミカとの結婚生活を通して感じた国際結婚の難しさについて紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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死んだ後も金がかかる
僕がミカと結婚してから、今までに4人、ミカのおじとおばが亡くなった。
大方は脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病が原因だ。脂っこい食べ物と甘い飲み物を毎日とるから、生活習慣病を抱えている人が驚くほど多い。体の調子が悪い人も珍しくなく、50代を超えた頃から亡くなる人も出てくる。
最近では、フィリピンに帰省する度に、会わない間に亡くなった親戚の墓参りに行く。乗り合いバスや、バイクタクシーで共同墓地まで行く。
共同墓地にはコンクリートで作られた、集合墓が並んでいる。カプセルホテルのように、3段、4段と重ねられた区画に棺が納められている。日本のように綺麗に整備されておらず、区画の大きさもバラバラだ。火葬はしない。
「この辺りだったな」と、案内してくれる親戚たちも、墓に刻まれた名前を確認しながら探す。草が生い茂り、お菓子の袋やゴミがそこら中に落ちている。一緒に来た子供たちは知らない人の墓の上をピョンピョンと飛び回る。
「こりゃ死んでも、知らない人たちに踏まれたり、ゴミを捨てられたりで、静かに寝れないな」と、ミカにいうと、
「そうだね。日本はお墓きれいだし静かだもんね。フィリピンは死んでもうるさいわ。私も、死んだら日本のお墓がいいわ」などと言う。
墓を見つけると、墓地の外で買ったキャンドルに火をともし、墓前に立てる。
「兄貴、ミカが来たぞ。天国から見てるか?」と、亡くなった叔父の弟が言う。
一緒に来た人たちは、他人の墓に腰を掛け、持ってきたお菓子を食べている。国が違えば、埋葬方法も、墓参りの仕方も違う。
叔父さんの眠る墓地の上下左右はまったく知らない人だ。きっと、他の墓参りに来た人たちも同じようにゴミを捨て、墓に腰を掛けているのだろう。
「何年かすると中から棺が出されて燃やされるんだ。場所が空いたら、また違う人が入る。もし出されたくなかったらお金を払わないといけない」
死んだ後も金がかかる。
よくよく見渡してみれば、屋根と柵が付き、まるで家のような墓地もある。金持ちは墓地も豪華だ。貧乏人は共同墓地で、さらに何年かしたらそこからも出されてしまう。