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「ありがとう。本当に金を貸してくれて助かった。今はビジネスが軌道に乗り出して、利益も出てきた」

 と義兄は言った。ビジネスは本当に軌道に乗っているようで、フィリピンでも稼げるようになったため、日本からの送金額は少なくなり、頻度も減っていった。

本当に必要な送金なのかを見極めるのが難しい

 フィリピンからの金の無心のあまりの多さに、こちらも疑いの目で見るようになっていた。「どうせ貸しても返ってこない」と決めつけてもいた。

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 だが、返ってくることもある。ただ単に金が欲しいからだけではなく、本当に必要なこともあるのだ。だが、それが本当に必要な送金なのかを見極めるのは難しい。

 僕も送金すべてに反対するわけではない。仲の良い親戚に子供が産まれたり、ミカの父母の誕生日に送金するのは嫌だとは思わない。

 ただ、日本の生活とフィリピンへの送金、そのバランスが難しいのだ。

 日本とフィリピンの婚姻カップルの離婚件数は多い。性格の不一致、DV、浮気など離婚には様々な理由があるだろうが、その中にはかなりの確率で送金問題も含まれているだろう。

 送金は、家計に影響する。いくらフィリピンの家族を助けるために必要といえども、日本での生活もある中、毎月大きな額を送るのは厳しい。

 今後も、夫婦の間で送金に対して意見を合わせることは難しいだろう。また送金は夫婦の問題だけでない。フィリピンの家族とも理解し合わなければならない。

 結婚した夫婦の間ですら、言葉、育った環境の違い、考え方など、いわゆる「文化の壁」にぶつかることもある。それが、フィリピンの家族と僕の間となると、より強くなる。

 だが、僕たち夫婦は、日本とフィリピンの経済格差がなければ出会っていなかった。今、送金に関して悩むようなことがなければ、ミカとも出会うことがなかったということだ。

 縁あって夫婦になったのだから、これからもミカとフィリピンの家族とぶつかり合いながら、国際結婚したからこそ感じることができる世界を見ていきたい。