多浪のコミュニティが喫煙所にたまっていた
諸橋 いまはそんなことないだろうけど、90年代なかばはそんな連中が結構いたんですよ。ただ、その手の人たちって僕より先輩で。3浪、4浪、5浪といった多浪のコミュニティが出来上がっちゃっていて、予備校の喫煙所にたまっていたんです。しかも、高校からその予備校に通っているから、めちゃくちゃゆるいけど先輩後輩の関係もあって。
僕もタバコを吸いに喫煙所に行ったら、すでに多浪の方々がいて。僕も真面目じゃない風体だったから「どこから来たの?」って声をかけられて。先輩だからって偉そうにする人がいないんですよ。だからこっちも最初からタメ語で話せて、毎日一緒にいるうちに仲良くなって。
そうしたら、そのうちのひとりとタバコ吸ってるときでしたね。「あるよ。やる?」「へぇ、やるやる!」って。
――パケを見せられて、それがなにかすぐにわかりましたか。
諸橋 わかりますよ(笑)。ビニールのアレに入っていて、もうバリバリじゃないですか。正直、ヤバいなとは思いました。
ただ、声をかけてきたヤツって、すごいフレンドリーだったんですよ。いっつも「諸ちゃん、諸ちゃん」って仲良くしてくれて。それもあっての「やる?」だったので、「やるやる!」と乗っかっちゃった感じですね。
「ドアの向こうで、みんな東大目指して勉強してる」というドキドキ感
――どこで試したのですか。
諸橋 予備校のトイレ。アブリで。彼がアルミホイルを持って、そのうえに覚醒剤を置いて、アルミの下からライターであぶって。ストローがないから、ボールペンを分解してリフィルとか抜いてストロー代わりにして吸いました。そのボールペンをバラす光景が今でも脳裏に焼き付いてます。
――なにかしらの効き目を感じましたか。
諸橋 あんまりピンとこなかったですね。いま思えば、パケを見せられてかなり興奮していたのもあったけど、ふかしていたんですよね。やっぱり怖くて、しっかりと煙を吸って肺に入れなかった。吸っているふりをして「おお~!」みたいな感じだったんじゃないかな。さすがに、こないだまで高校生で、田舎から出てきたばっかのヤツがいきなりシャブは吸えないですよ。
ただ、ドキドキ感はすさまじかったです。だって、ちょっと向こうじゃ、みんなが東大を目指して勉強してるんですよ。そんななかで、シャブやってるわけですから。この感覚は、ヤバかったですね。いま思い出しても、本を書いていてもそうだったし、いろんなYouTubeに出してもらってこの話をしていますけど、そのたびに、あのドキドキ感がぶりかえすというか。